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『何をそんなに慎ましく』吉田奈津美監督 言葉にならないものを伝える 【Director’s Interview Vol.322】

『何をそんなに慎ましく』吉田奈津美監督 言葉にならないものを伝える 【Director’s Interview Vol.322】

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初監督作『ひとひら』(17)が国内外の映画祭で多数受賞し、初長編作品『浮かぶ』(23)は都内劇場初週5日間満席、上映期間が延長された実績を持つ吉田奈津美。これまで是枝裕和監督やトラン・アン・ユン監督に指導を仰いできた注目の若手監督だ。そんな彼女の次回作は、男女3人が自分たちだけの「愛」を見つける様を描いた『何をそんなに慎ましく』。メインキャストには野内まる、山本奈衣瑠、須藤蓮の出演が決定しており、現在クランクインに向けてクラウドファンディングが実施中だ(2023年6月30日まで)。


『何をそんなに慎ましく』制作準備特報 第一弾


『何をそんなに慎ましく』は商業映画ではなく自主映画として制作される。自主制作にこだわる吉田監督の意図はどこにあるのか。本作に込めた思いについて話を伺った。



『何をそんなに慎ましく』あらすじ

幼い頃から、引き裂いた布を立体的に貼り付けることで美術作品を作ってきた主人公の草(ソウ/野内まる)と、彼女と精神的に強い結びつきを持っている幼なじみの一樹(イツキ/須藤蓮)。草は一樹と、一樹の恋人であるさおり(山本奈衣瑠)と3人で東京に暮らしている。草は一樹との間にある精神的な結びつきや、油絵講師であるさおりとの共同美術作品制作など、草は自分と2人との間に築かれた、恋愛と同等に強固な個人的なつながりを何よりも大切なものとしていた。しかしそんなある日、さおりの妊娠が発覚する。恋人である一樹と同じだけの愛情を草に持つさおりの先導で、周囲に前例のない新しい関係性を築こうと歩みを進めていく3人。しかしその一方で、草は世の中のそして自分の中に存在する「恋愛至上主義」的な価値観に飲み込まれ、本当は欲しくないはずの「(恋愛的な)愛」を求めて3人のアパートを抜け出していく。


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言葉にならないものを伝える



Q:本作のテーマは、「恋愛至上主義的な現代日本のなかで、恋愛関係ではないが「恋愛と同等に大切で強固な関係性」を築くことができるのか。」となっています。このテーマを世に伝える方法として、「映画」を選んだ理由を教えてください。


吉田:映画作りで大切にしていることの一つに、「世の中の言葉に定義づけられていない感情や関係性を描く」というものがあります。言葉にならないものをイメージに乗せて観客に届けることができるのが「映画」だと思います。また、映画は視覚芸術なので、空間における人の存在や、環境と人物の距離感を表現することもでき、「言葉にならないものを伝える」ことにとても適している。それが表現として「映画」を選んだ理由です。だから、クラウドファンディングのページでテーマを説明するときは苦労しました。無理にでも言葉に置き換えて文章にしないといけないので、かなり模索しました。


 


Q:言葉だけだと、もどかしさを感じますか。


吉田:そうですね。私自身、口数が多くなってしまったり、文章が長くなってしまうことがよくあるので、そこをうまく映像で伝えることが出来ればと思っています。映画とは、カットの集合であるシーンと、そのシーンの集合で初めて構成されるもの。個別のカットやシーンだけでは表現しつくせないものが、映画という大きなイメージの中で初めて観客に渡せるものになる。そう考えると、言葉ではなかなか伝えられないものがあると思います。





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