映画は撮りたい風景から始まるべき
Q:ロケ場所(旅館“ふじや”)を決めてから脚本を書かれたとのことですが、ロケ場所を決めている段階ではどのくらいの内容が決まっていて、ロケ場所が決まってからはどれくらいの落とし込みがあったのでしょうか。
上田:映画って、撮りたい風景から始まるべきだと思うんです。今回はまず、貴船を撮ろうと決めて、ふじやさんと貴船神社さんに相談してからロケハンに行きました。そこで、どの場所から物語を始めたらいいかを考え、今回のルールに行き着いた。そしてそこから、ループする内容を考えていった感じです。
Q:京都の冬はオフシーズンとはいえ、貴船は観光地の真っ只中です。
上田:冬だから人はいないと聞いていたのですが、インバウンドの方や観光客が結構いましたね(笑)。「これはヤバイな」と思いましたが、でも観光客が来るのは貴船にとっては素晴らしいこと。皆様にご協力いただき撮影させてもらいました。観光地ということもあって、あくせく急いでいる人たちはいないんですよ。撮影という行為を、祝祭感を持って迎え入れてもらえた感じもありました。
『リバー、流れないでよ』© ヨーロッパ企画/トリウッド 2023
Q:京都が舞台の物語なのに、京都弁を使わないことに何か意図はありますか?
上田:以前「四畳半神話大系」(10)という京都が舞台のアニメの脚本を担当しましたが、それも標準語なんです。京都弁を喋るから京都というわけでもなく、むしろ京都弁を使うことで必要以上の“臭み”が出るかもしれない。ヨーロッパ企画も関西の劇団ですが、そことはちょっと距離を取りたいのもあり、関西弁で芝居はしないんです。風景としての京都はすごく素敵だし思う存分撮っていますが、言語としての京都弁は、ひょっとしたら不自由だからかもしれないですね。僕自身が使い慣れてないし、京都弁って難しいんです(笑)。
Q:京都弁にすると、時間周りの説明がややこしくなるのかなと思っていました。
上田:そうですね。そういうことです(笑)。時間の説明もしなければいけないし、推しのアイドルの話まで出てくる。いろんな話題が劇中に出てくるので、それらをいちいち京都弁でやっていると、不要な重みが出るかもしれない。もちろん京都の風情を描く作品なら、絶対に京都弁の方がいいんですけどね。