脚本を頑張ることですごく面白くなる
Q:今回はヨーロッパ企画とトリウッドによる自主制作ですが、もしバジェットが大きくなるのであれば、やってみたいことなどはありますか?
上田:映画を作るのがもう少し上手になったら、そういった欲も出てくるかもしれませんが、今はこの規模で充分ですね。演劇も自分たちの手弁当で始めましたが、だんだん慣れてくると、もうちょっと大きな劇場でやりたいと思うようになった。でも初期のころは手元にある材料を扱いきるので手一杯で、とてもじゃないけど大きな劇場ではやれなかった。
脚本家としてはそれなりに経験も積めてきたので、大きなバジェットの映画に誘ってもらうこともあります。でもチームとしては、まだそこまで大きなバジェットを使いきれる自信も無い。だから今ある範囲で最大限やる!ということが、熱を生む時期なんだと思っています。
『リバー、流れないでよ』© ヨーロッパ企画/トリウッド 2023
Q:やれる範囲と言いつつも内容は圧倒的に面白い。そこがすごいなと思います。
上田:脚本を頑張ることですごく面白くなることってあると思うんです。映像プロジェクトの中では脚本は第一走者。脚本家は本当に企画の大元を担うので、ここを頑張ることですごく面白く出来る可能性を秘めている。また、脚本だけで1年ぐらいずっと走っていたものが、制作が始まると急にスタッフがワッと増えて、動くお金も比例して増えていく。そこで各セクションがフルに力を発揮するためにも、脚本はとても重要になってきます。脚本というベースが曖昧なまま制作に突入してしまうと全てが崩れてしまう。監督やプロデューサーと相談して、これ以上詰めるところはないというぐらいに詰めた状態の脚本を作り上げて初めて制作がスタートする。特に予算が少ない映画であればなおさらです。それくらい脚本は大事だし、そこに誇りも持っていますね。
Q:影響を受けた映画監督や映画作品を教えてください。
上田:SABU監督ですね。SABU監督の『POSTMAN BLUES ポストマン・ブルース』(97)や『弾丸ランナー』(96)など、SABU監督の作品は自分の好みに似ている感じがするんです。あるコンセプトに基づいて、それを突き抜けきるという方法で映画を作られていて、すごく本質的な映画作りをされている。映画だったら言葉じゃなくて画で語る方がいいし、セリフがほとんど無い作品もあったりして、それでいてめちゃくちゃ面白いんです。
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原案・脚本:上田誠
1979年生まれ、京都府出身。ヨーロッパ企画代表で、全ての本公演の脚本・演出を担当。2017年に舞台「来てけつかるべき新世界」で第61回岸田國士戯曲賞受賞。近年の主な作品に【映画】『ドロステのはてで僕ら』(原案・脚本)『前田建設ファンタジー営業部』(脚本)【アニメ映画】『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(日本語吹き替え版脚本)『四畳半タイムマシンブルース』(原案・脚本)【ドラマ】「魔法のリノベ」(脚本/KTV)【舞台】「たぶんこれ銀河鉄道の夜」(脚本・演出・作曲)などがある。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『リバー、流れないでよ』公開中
配給:トリウッド
© ヨーロッパ企画/トリウッド 2023