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「イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K」イ・チャンドン監督 スクリーンに見えないものを感じてほしい【Director’s Interview Vol.344】

「イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K」イ・チャンドン監督 スクリーンに見えないものを感じてほしい【Director’s Interview Vol.344】

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韓国の巨匠イ・チャンドン監督のキャリアを、ここ日本で一挙に振り返る貴重な機会がやってきた。初の特集上映「イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K」では、長編デビュー作『グリーンフィッシュ』(97)から、代表作『ペパーミント・キャンディー』(99)『シークレット・サンシャイン』(07)などの全6作と、監督自身が自作を語る新作ドキュメンタリー『イ・チャンドン アイロニーの芸術』(22)が4Kで一挙上映される。


これに先駆けて、イ・チャンドンが映画監督になる以前、小説家時代に著した「鹿川(ノクチョン)は糞に塗れて」も30年越しに邦訳版が刊行された。小説から映画に至るまで、すべての作品に共通するのは、社会の暗部や個人の闇、歴史・宗教・差別といったデリケートな題材に踏み込みながら、シンプルなテーマやメッセージに寄りかかるのではなく、ひたすらに物語を粘り強く語ってゆくスタンスだ。


特集上映と小説の刊行を記念し、2023年8月、イ・チャンドンが5年ぶりに来日。創作のスタンスやモチーフの扱い方、映画ファンが待ち望む次回作などについてじっくりと聞いた。


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日本初の特集上映にあたり



Q:まずは今回、日本で初めて監督の特集上映が開催され、6作品の4Kレストア版で一挙に上映されることをどのように受け止めていますか?


イ:このような機会を作っていただけて嬉しいです。この企画が、じつは私の作品すべてを4Kで観られる事実上初めての機会になります。昨年(2022年)2~3月、2ヶ月かけてレストアの作業をおこない、その後、4月に韓国の全州国際映画祭にて特別上映があったのですが、そこでは映写機が4Kに対応しておらず、4Kのクオリティで作品を観ていただくことができなかった。また、フランスのリュミエール映画祭では4Kで上映されましたが、6本すべてを上映できなかったんです。


ですから私自身も、まだ4Kの映写機では完成版をすべて観られていません。レストアではDI(デジタル・インターミディエイト)といって、デジタルで色を補正する作業をしましたので、スクリーンでどう見えるのかを私も確かめたいと思っています。そして日本には、私の作品を以前から観てくださっている方も、また今回初めて観てくださる方もいらっしゃるはず。どちらの方にとっても良い体験になることを願っています。



『イ・チャンドン アイロニーの芸術』 (C)MOVIE DA PRODUCTIONS & PINEHOUSE FILM CO., LTD., 2022


Q:ドキュメンタリー映画『イ・チャンドン アイロニーの芸術』では、監督自身がこれまでの作品を解説されています。なぜ今、自ら作品を解説することを決意したのでしょうか?


イ:周囲から出るように説得されたんです(笑)。特にアラン・マザール監督には、非常に誠意のこもったご依頼をいただきました。それでも、個人的にはかなり迷ったんです。作品を自ら説明する行為はあまり好きではないですし、私はカメラの前に立つのが苦手なタイプですから。しかし私自身も、映画監督や芸術家の作品世界を覗いてみたい、その人の人生を覗いてみたいと思うことがあります。私もその対象になりうるのだなと思い、今回は勇気を出し、重い腰を上げることにしました。とはいえ、相当ぎこちなかったと思いますが(笑)。





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