※向かって左より大森歩監督、松岡芳佳監督、金川慎一郎監督
「わたしと、私と、ワタシと、」松岡芳佳×大森歩×金川慎一郎 CMディレクターが生み出した3つの短編映画たち【Director’s Interview Vol.347】
三者三様の脚本作り
Q:脚本を作る際に苦心した点はありますか?
大森:私はX(Twitter)の裏アカウントや、大学生の時ならmixiに思ったことを全部書き留めていました。そうやって日記的に書き留めていたものを全部印刷して、ジロジロ見ながら脚本を書いていきました。ほとんどムカつく話ばっかりでしたが、意外とそこからネタが出てきましたね。楽しい作業でしたよ。
松岡:私は”脚本 書き方”とググるところから始まり、見様見真似で一度書いてみました。それを先輩に見てもらったところ、「キャラクターの誰にも命が宿ってない…」と言われてしまって(笑)。話を作ることに集中してしまい、人間を全く描けてなかったんです。それで、登場人物がそれまで生きてきた物語を考え、主人公の履歴書を作り、関係図を書き出し…と、一から全てやり直しました。それで徐々に、主人公が話す言葉が見えてきた。「なるほど、先輩に言われたのはこういうことか」と、そこでやっと脚本の書き方がわかった感じでした。いろいろやり直したので、応募は締め切りギリギリ。脚本を書くのが一番しんどかったですね。
Q:人物造形をやり直すことにより、物語や構成に変化はありましたか。
松岡:ありました。「この子は絶対こんなことしないな」と思ったり、「物語の構成に無理があったな」と気づいたり、挙句「なんでこのオチにしたんだっけ?」と(笑)。実質的にゼロベースから考え直すことになりました。
『冬子の夏』Watashi-Films© All rights reserved
Q:金川さんの場合は脚本ありきでしたが、演出に落とし込み際に脚本を改訂されましたか?
金川:読みながら気になるところは書き出し、その部分は結末も含めて書き直しました。「こういう感じにしたいんだけど、どう?」と煙山さんに送ると、結末以外は最初のものに戻されて返ってきた。彼女の強い意志を感じましたね(笑)。映像業界のプロとして提案したつもりでしたが、自分ではいじらずに、このまま撮るのが正解なのかなと。彼女の中には具体的な世界観があり、彼女にはもう画が見えていた。ではそれを具現化するにはどうしたらいいのか、まずはそれを考えるようにしました。
Q:脚本で理解できない点などはありましたか?
金川:ありましたよ。「このセリフはどういう意味なんだ?」と、気になるところは逐一確認しました。すると「こういう気持ちで書いている」と、セリフの横に赤字を入れて戻してきてくれました。そのおかげで、僕と煙山さんの間では全てのセリフについて意味を共有でき、ある意味100%理解した状態で撮影に臨むことができました。
それでも仮編集を見た煙山さんからは、「いい意味で、自分が想像していたものと全く違った」と言われてしまった(笑)。彼女の中ではもっと具体的にイメージがあったのかもしれませんね。