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「わたしと、私と、ワタシと、」松岡芳佳×大森歩×金川慎一郎 CMディレクターが生み出した3つの短編映画たち【Director’s Interview Vol.347】

※向かって左より大森歩監督、松岡芳佳監督、金川慎一郎監督

「わたしと、私と、ワタシと、」松岡芳佳×大森歩×金川慎一郎 CMディレクターが生み出した3つの短編映画たち【Director’s Interview Vol.347】

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第一線で活躍するCMディレクターたちが手がけた3つの短編映画オムニバス「わたしと、私と、ワタシと、」が、23年9月2日(土)より新宿K‘s cinemaにて公開される。生まれた経緯やコンセプトも異なる3作品だが、「若手女優 × 人気CMディレクター」という共通点のもと今回の上映に集うこととなった。普段はCMを手掛ける監督たちが、短編映画を手がけることになった理由とは? CMと短編映画、その制作過程にはどんな違いがあったのか? それぞれの作品を手掛けた、松岡芳佳監督、大森歩監督、金川慎一郎監督の3人に話を伺った。



深川麻衣×松岡芳佳監督『ただの夏の日の話』あらすじ

まだ昨晩のアルコールが抜け切らない重い⾝体をゆっくりと起こしたとき、陽⽉(深川麻衣)の記憶はどこにも結びつかなかった。ただわかったこと、それは窓の外に⾒える景⾊がたぶん東京ではないこと。部屋の中に⾒知らぬ男性(古舘寛治)が寝ていること。さらに⾔うと、” おじさん” な気がするということ。酒に呑まれ記憶を無くし、陽⽉はなぜか「桐⽣」に来てしまっていた。どこのだれかも知らない” おじさん” と。そんな、⾒知らぬ場所で⾒知らぬ⼈と過ごした、“ただの” 夏の⽇の話。



古川琴音×大森歩監督『春』あらすじ

認知症のジィちゃんと美⼤⽣の孫アミ(古川琴音)、2⼈で暮らす1年間を描いた作品。⼤⼈になるアミとは反対に、認知症が進み⼦供返りしていくジィちゃん。イライラを募らせるアミは、描きたいものが描けず、制作や進路にも⾃信を失っていくが、ある⽇、初めて聞くジィちゃんの話に気持ちが動かされ……。



豊島花・長澤樹×金川慎一郎監督『冬子の夏』あらすじ

⾼校最後の夏。進路を決められないまま、ダラダラと過ごす主⼈公・冬⼦(豊島花)。そして唯⼀の理解者である親友・ノエル(長澤樹)。進学するのか、しないのか。この街を出るのか、出ないのか。騒がしい周囲に反するように、あえてのらりくらりと⽇々を送る⼆⼈だったが、⾏く末を定めつつあるノエルの様⼦に、苛⽴ちや焦りを募らせる冬⼦。⾏き着いた満開のひまわり畑で、⼆⼈は⼤きな岐路を迎えるー。


Index


なぜ短編映画を作ったのか?



Q:今回の短編映画を作ったきっかけを教えてください。


金川:高校の同級生の煙⼭夏美さんから突然連絡が来て、「群馬の伊参スタジオ映画祭でシナリオ大賞を獲ったので短編映画を作らないといけない。監督をやってくれないか」とオファーされたのがきっかけです。もともと自分でも短編映画の企画はしていたのですが、実現まで至らず…。それがちょうど無くなったタイミングで連絡が来たこともあり、運命的なものを感じました。それまでは60秒以上の長尺は作ったことがなく、60秒CMでも「プレビューが長いなぁ」と思っていたくらいでした(笑)。 


大森:私が『春』を撮ったのは6年前。仕事に慣れてきた頃でしたが、CMディレクターで売れるかどうかというクソみたいな呪いが、社会人になってからずっと纏わり付いていました。そんなこと気にしなくていいのにずっと背中に乗っかって、生きていてあまり楽しくなかったんです。仕事では色んなところに打合せに行き、夜、家に帰ってカバンを開けると、打合せ先ごとにもらったペットボトルが4〜5本ぐらい入っていて、その残りを排水口にジョボジョボ…と捨てている瞬間、何故だか涙が溢れてきた。自分も消費されている気がしたんです。


そしてちょうどその頃、自分のじいちゃんが亡くなりました。この映画『春』と同じく、私は大学時代の3年間じいちゃんと一緒に住んでいました。お葬式の時、冷たくなったじいちゃんを見ながら「あぁ、人っていつかは死ぬんだよな」と…。それでふと、長編でも作ってみようと思ったんです。その後脚本を書き、「きりゅう映画祭」に応募して作ることになりました。



『春』Watashi-Films© All rights reserved


松岡:私の師匠、永井聡さんが監督された『キャラクター』(21)の現場に伺った際、映画を作っていく過程がすごく面白かったんです。「私も映画を撮りたいと初めて思いました」と永井さんに相談したら、「だったら脚本を書いてみたらいいんじゃない」と。小さい時は物語を書くことは好きでしたが、大人になってからは書いておらず脚本なんて一度も書いたことはありませんでした。「うーん…」と悩んでいた次の日に、偶然「きりゅう映画祭」から応募案内のメールが届いたんです。タイミングがバッチリ過ぎて、これはやらないと逃げたことになる(笑)。もうやるしかないと思って書き始めました。


「きりゅう映画祭」の応募のルールは“桐生で撮影すること”。桐生の景色で何を撮るかを考えた時に、仕事に生き急いで疲れている自分のような東京の女の子を、そこにポンと置いてみようと思ったんです。そこからどう物語が生まれるのか、話を膨らませてみました。桐生の実際の場所を調べ、ボートに乗る池が心にとまったので、そこを物語の鍵となる場所として脚本を進めました。その後、応募した脚本が受賞し撮ることになった次第です。ちなみに、起きたら知らない人と知らない場所にいたというのは、友達の実話です(笑)。


大森:私はあの始まりが好きでしたね。二人がああいう風に出会うことで、もしかするとエッチなことがあるかもしれない⁉︎っていう変な緊張感がある(笑)。ああいった吉と出るか凶と出るかの緊張感はなかなか作れないなと。


松岡:嬉しいです!ありがとうございます!実は、二人が初めて出会うシーンは一番最初に撮らせてもらったんです。実際に深川さんと古舘さんは一緒に芝居をするのはそこが初めてで、劇中の二人と近い状況。まだお互いを掴めていない状態がリアリティ生み、その効果はありましたね。





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