© Emmanuelle Jacobson-Roques
『ダンサー イン Paris』セドリック・クラピッシュ監督 描かれたことのないダンサーのドラマを撮りたかった【Director’s Interview Vol.350】
若い俳優のエネルギーを映像に収めたい
Q:『ダンサー イン Paris』の原題は「En Corps」です。タイトルに込めた思いは?
クラピッシュ:一種の言葉遊びです。フランスでは、舞台が終わると劇場は「アンコール」という掛け声で溢れます。一度はケガで中断したエリーズの人生が、また続いていく。そこでアンコール(=もう一度)という言葉の響きを利用し、実際のEn Corpsの意味である「身体」に重ねました。
Q:『ダンサー イン Paris』には青春映画としての側面があります。あなたはやはり、この路線が好きなのでしょうか?
クラピッシュ:たしかに私は新しい世代を描くことが大好きなようです。最近、TVシリーズとして手がけた「ギリシャ・サラダ」(アマゾンプライムで配信)も『スパニッシュ・アパートメント』の続編のような作品で、現在の若者たちを主人公にしています。とはいえ、ジャンルとしての青春映画にこだわっているわけではありません。デビューしたばかりの若い俳優たちを映像に収めたくなるのが、映画作りの大きな動機でしょう。20代の彼らはエネルギー、勢い、仕事に対する情熱が肉体から湧き上がっています。人生のキャリアを始めようとする、その眩しさを映画にしたいのです。
『ダンサー イン Paris』© 2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA
Q:ダンスにまつわる映画を再び撮る予定は?
クラピッシュ:希望は持っています。フィクションということならミュージカル映画に挑戦してみたいですね。ダンスの要素をすんなり取り込めますから。これまでダンスのドキュメンタリーを撮っていますし、ダンスのステージそのものを撮影した作品もあります。フィクションでダンスを扱うと新しい発見がある。それに今回気づいたので、新作の構想を練りたいです。
Q:この映画を撮って改めて気づいたダンスの魅力とは?
クラピッシュ:ダンスというのは、生きているアートです。ライヴ・パフォーマンスという言葉がすべてを表しています。ミュージシャンがコンサートとスタジオ録音でまったく違う演奏をするように、ダンサーも舞台公演と撮影用でパフォーマンスが変わる。それを本作で確信できました。新型コロナのパンデミックで公演ができなかったダンサーの思いも、今回の撮影で受け止めることができました。
Q:では最後に、あなたはなぜ映画を撮るのかを聞かせてください。
クラピッシュ:フランスの小説家、アルベール・カミュは「生きている限り、表現者として何かを書いていきたい」と語っていました。私もそんな感覚です。私が心から尊敬する日本の黒澤明監督は、コメディ、人間ドラマ、悲劇にアクションと、さまざまなジャンルの作品を撮り、人生の多様な側面を描きました。それこそが芸術家の人生なのではないでしょうか。私も人生を表現するために映画を撮っている気がします。
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監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
1961年9月4日、パリ近郊のヌイィ=シュル=セーヌに生まれる。パリ第3大学で、次いで第8大学で映画を学び、学位を得る。その後、ニューヨーク大学で2年間、映画を学ぶ。’84年に最初の短編「Glamour toujours」を監督し、その後次々と短編を制作する。フランスへ帰国後、’89年に撮った短編「Ce qui me meut」が話題となり、’92年に最初の長編『百貨店大百科』を発表。’96年『猫が行方不明』(96)はベルリン国際映画祭映画批評家協会賞を受賞し、大ヒットする。その後も、『家族の気分』(96)、『パリの確率』(99)、『PARIS パリ』(2008)などパリを舞台にした作品を連打する一方、『スパニッシュ・アパートメント』(02)、『ロシアン・ドールズ』(05)など、青春の一時期をテーマにした作品がトレードマークに。長年バレエ・ダンスファンであり『オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に』(10)や、パリ・オペラ座の舞台を撮った作品もあり、クラピッシュの映画の多岐にわたる魅力も見逃せない。また、作品のどこかにカメオ出演しており、それを発見するのも楽しみのひとつ。最近の作品に、『ニューヨークの巴里夫』(13)、『おかえり、ブルゴーニュへ』(17)、『パリのどこかで、あなたと』(19)など。
取材・文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
『ダンサー イン Paris』
9/15(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
© 2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA