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『国葬の日』大島新監督 日本人の「無関心」をホラー映画のように描き出す異色ドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.352】

『国葬の日』大島新監督 日本人の「無関心」をホラー映画のように描き出す異色ドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.352】

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日常性を大事にしたかった



Q:よくニュース番組などで「●●の1日」といった特集VTRがあります。ああいったVTRに違和感をおぼえるのは、結論ありきで撮っているからだと思います。『国葬の日』は全く違う印象を受けます。


大島:ニュース番組でのそういった特集は意味性が強すぎるといつも思います。だから『国葬の日』には一見意味がないことも含めて、要素として入れ込みました。それぞれの場所で色々な日常があるわけで、例えば浅草で出くわした小学生の団体の様子を編集で入れてみる。もしかしたら、あのシーンが入っていることに違和感を持つ人がいるかもしれない。でも私はああいう何気ない日常性を大事にしたかったんです。


Q:国葬というフィルターを通して見る日常に、ある種のグロテスクさを感じました。そういう日常を大島監督は見せたかったのでしょうか。


大島:それは狙っていました。東京でいうと、新宿駅の西口の喫煙所と、上野のパチンコ屋さんの10時の開店。これは完全に狙いました。実は新宿駅の喫煙所は私がよく行くんです。この仕事をしていなかったら、自分は今日ここで煙草を吸っていたかもな…と思いました(笑)。私はパチンコをやらないのですが、パチンコ店は以前から気になっていて、どの街でも開店前から人が並んでいる。この人たちは国葬の日もおそらくいつも通りに並ぶんだろうなと思って。それであの日は、撮影を武道館から始めて、東京駅、新宿、渋谷から浅草に行くと決めていたんです。それで渋谷から浅草へ移動する途中の上野あたりで、ちょうど10時になるだろうからと、事前にアメ横でパチンコ店を見つけておいて、そこで撮りました。



『国葬の日』(C)「国葬の日」製作委員会


Q:音楽を使わず、武道館の周りをジョギングする人の足音など、状況音を前面に出した演出も日常性を際立たせています。


大島:素材をラッシュしていて、町のノイズやアナウンス、福島の廃墟になったスーパーマーケットの静寂といった音がいいなと思ったんです。音楽を使うとその良さがなくなってしまうので、ラッシュした時点で音楽とナレーションは使わないことに決めました。


Q:福島在住の女性の自宅にある「20K」と書かれた杭の意味が最初はわかりませんでした。実はあの杭を境にして原発事故の補償をされた人と、されなかった人が分断されているという意味だと後で知りました。以前の大島監督ならテロップで説明するんじゃないかなと思います。


大島:その通りですね。多分9割の人には伝わらないだろうとは思ったんですが、今回はその手のテロップはやめて、著名な方も含めて人名も入れませんでした。その日は全員が対等な一市民だという風に見せたかったんです。


Q:それもあえてフラットな目線にするために?


大島:そうですね。





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