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『国葬の日』大島新監督 日本人の「無関心」をホラー映画のように描き出す異色ドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.352】

『国葬の日』大島新監督 日本人の「無関心」をホラー映画のように描き出す異色ドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.352】

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なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『香川1区』(21)といったドキュメンタリーで、「政治」という忌避されがちなテーマをエンターテインメントとして見せてくれた大島新。そんな彼が最新作で選んだテーマは「安倍晋三元首相の国葬」。しかもその手法がユニークだ。国葬当日に全国10か所で同時に撮影を敢行。その日、日本人は何をしていたのかを克明に描き出す。こう書くと、『国葬の日』は地味な映画に思えるかもしれない。だが本作は、我々が何となく気づいている日本人の「無関心」という宿痾をまざまざと見せつける戦慄すべき作品だ。誤解を恐れずに言えば、鑑賞後の感覚は『ローズマリーの赤ちゃん』(68)のようなホラー・オカルト映画に近い。


監督自身も完成版を観て「困惑した」と語るこの異色のドキュメンタリーは、いかにして実現したのか。大島監督に話を聞いた。


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国葬3日前に急きょ撮影を決断



Q:本作の製作は前田プロデューサーから「国葬について何かやらないんですか」と問いかけられたことが、きっかけになったそうですね。


大島:彼女とは折に触れ、企画の話や、世の中がどうなっていくのかといった話をしているので、「国葬について何か企画ができないだろうか」と言われていました。でも私はピンときていませんでした。いわゆる通常のドキュメンタリーにすることを考えると、素材を山ほど撮らなければならないので、難しいかなと思っていたんです。だから国葬については心に引っかかってはいたけど、保留していた感じでした。


Q:そんな中、国葬3日前に足立正生監督が新作映画『REVOLUTION+1』を上映する※というニュースを聞き、急きょ撮影を思い立ったそうですね。


※安倍元首相の銃撃犯・山上徹也をモデルにした劇映画。事件後に急きょ製作され、2022年9月27日の国葬当日に未完成版の上映イベントが渋谷で行われた。完成版は同年12月から上映。


大島:これはひとつ軸になるなと思いました。我々は国葬会場に入れないから、当日の違う場所でのイベントを撮影するのはありだと。でもそれだけでは映画にならない。それで考えていたら、「撮影するのは、自分独りじゃなくてもいい」と気づきました。乱暴ですが10人のディレクターに全国に散ってもらえればいけると。いわゆるストーリー性のあるドキュメンタリーではなく、「国葬当日のスケッチ」という方針に切り替えたんです。



『国葬の日』(C)「国葬の日」製作委員会


Q:国葬や安倍元首相とは関係が薄そうな、京都、広島、長崎、清水、札幌をロケ地に選ばれたのは何故だったのでしょうか?


大島:すぐ決まったのは、東京、下関(安倍元首相の地元)、奈良の銃撃現場、沖縄(辺野古)、福島の5か所。これはその土地が持っている意味や、安倍政権との関係性で決めました。他は後半に決まった場所です。海外の人にも作品を見てもらいたかったので、世界的に知られた都市を入れた方がいいと思い、広島、長崎、京都を入れました。そこまで決まったらあとはバランスで、北海道と四国がなかったので札幌を入れました。一番最後に決めたのが静岡県・清水です。国葬の数日前に豪雨被害があった土地の人たちが、どうしているかを撮りたいと思いました。





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