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『ジョン・ウィック:コンセクエンス』チャド・スタエルスキ監督 観客に主人公の試練を体感してほしかった【Director’s Interview Vol.355】
歌手・真田広之のレコードも持っているほどのファン
Q:シリーズでは初めて日本が本格的に描かれています。大阪コンチネンタルのシーンは、どこか日本のアニメにも通じる色調を感じられました。
スタエルスキ:「攻殻機動隊」や「AKIRA」が連想されるかもしれませんが、何か特定の作品ではなく、日本のアニメ全体から影響を受けていると思います。僕がアクション・ディレクターを務めていた「マトリックス」シリーズも、日本のアニメの影響を強く感じられますが、あのシリーズのトーンは暗めでした。僕自身はどちらかと言えば、色味を強調するのが好き。ですから自分なりに色彩溢れた大阪を作ろうとしました。
Q:たしかに大阪のシーンでは色彩が印象に残ります。
スタエルスキ:「ジョン・ウィック」の1作目を作った時と違って、今回の4作目ではカラーグレーディング(色調の調整)の技術が格段に進化しています。アニメでよく見られたピンクや紫のネオンのような色合いを、以前は実写で表現するのは難しかった。現在はテクノロジーで可能になったうえ、撮影監督のダン・ローテステンの才能にも助けられ、色彩のこだわりを極めることができました。黒い部分も、より深い黒になったと感じてもらえるはずです。「ジョン・ウィック」を通して僕らはワールド・ビルディング=世界の建物を作る楽しみを享受しており、その過程で1作目から進化している技術を取り込んでいるのです。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』®, TM & © 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Q:日本のアニメ以外で影響を受けた作品や監督は?
スタエルスキ:ウォシャウスキー姉妹、ジョン・フランケンハイマー、セルジオ・レオーネ、黒澤明……と、これまで自分が触発され、脳にインプットされた監督の名前が出てきます。自分で演出する際も、そのインプットから逃れることはできません。今回、終盤の階段のシーンでの光の使い方は、まさにフランケンハイマーの影響でしょう。日本のシーンに関しては、「ジョン・ウィック」の3作目を撮った後に触れた多数の映画やTVシリーズ、書籍など1,000以上の作品のインプット蓄積に加え、新たに学んだ日本のサムライ文化や芸術の知識を生かしている感じです。僕のモットーは「A Lot of Little」、つまり色彩でも構図でも歴史でも、「ちょっとずつを、たくさん」集めて、表現すること。その典型的な例が大阪コンチネンタルの美術展示室で、さまざまな時代の武器や甲冑を色彩や、ライティングによって斬新なビジュアルへと導きました。
Q:真田広之を起用した理由を教えてください。
スタエルスキ:ヒロユキのことは彼が歌手の時代から知っていて、アルバムも持っています。ディスコ調の曲も歌っていましたよね(笑)? 彼とは長い付き合いで(日本語で)オオキイトモダチ。ずっと前から一緒に仕事をしたかったのですが、スケジュールが合わなかったのです。「ジョン・ウィック」の前作では彼のケガで出演が叶いませんでした。ですから今回は脚本段階から、ヒロユキを当て書きし、是が非でも出演してほしいと依頼したところ、コロナでスケジュール調整が難航しつつも、なんとか実現しました。
Q:さらにドニー・イェンの参加は、アクション映画ファンの胸を高鳴らせました。
スタエルスキ:誰に出演してほしいか考えたとき、僕は「エクスペンダブルズ」シリーズでの仕事を振り返り、ブルース・ウィリス、ウェズリー・スナイプス、チャック・ノリス、ジェット・リー、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルヴェスター・スタローンの顔を思い浮かべました。もちろんジャッキー・チェンも頭をよぎるなど、出演してほしいアクションスターの選択肢は多岐に渡ったのです。決め手は「旧友が闘う」という今回のテーマでした。観る人にとっても、どちらが勝つのかわからないキャスティングを考えたとき、ヒロユキとドニーが最適だったのです。もちろん僕自身の彼らへの思い入れの深さや、一緒に仕事をしたい情熱も起用の理由です。
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監督:チャド・スタエルスキ
『ジョン・ウィック』シリーズ(14、17、19)で監督を務め、大作アクション映画に数多く関わるアクションの伝道師。アクション/スタントコーディネーターとして『マトリックス リローテッド/レボリューションズ』(03)、『300〈スリーハンドレッド〉』(07)、『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)、スタントとして『マトリックス』(99/スタントダブル:ネオ)ほか。『マトリックス レザレクションズ』(21)では俳優としても出演している。今後『Ghost of Tsushima』、『レインボーシックス』などの監督作が控える。
取材・文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
9月22日(金)全国公開
配給:ポニーキャニオン
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