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『マトリックス レザレクションズ』歴史的シリーズがたどり着いた、極私的な“答え” ※注!ネタバレ含みます。
2021.12.18
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『マトリックス レザレクションズ』あらすじ
もし世界がまだ仮想世界〈マトリックス〉に支配されていたとしたらーーー?ネオは、最近自分の生きている世界の違和感に気付き始めていた。やがて覚醒したネオは、〈マトリックス〉に囚われているトリニティーを救うため、何十億もの人類を救うため、〈マトリックス〉との新たな戦いに身を投じていく。
Index
- シリーズに“答え”を示す、集大成的な第4作
- 両親と親友の死から生まれた、“復活”の物語
- 複雑だが洗練された、“答え”を出す方程式
- テクノロジーの進歩=時代の経過を示す機能も兼任
- 『マトリックス』は愛の物語へと収斂していく
シリーズに“答え”を示す、集大成的な第4作
『マトリックス』とは、何だったのか――? これは、本シリーズに「いつ・どのタイミングで」出会ったかによって、大きく変容する問いではないだろうか。テクノロジーを題材にしたエポック・メイキングな作品であるぶん、時代の空気感や観賞者の年代と密接に結びついているような気がしてならない。
“ドンズバ世代”からやや離れた自分にとっては、第1作『マトリックス』(99)が公開された当時はまだ小学生であり、なかなか理解することは難しかった(寄生虫のような機械がへそから吸い出されるシーンや、口がなくなる等の演出が軽くトラウマだった記憶が強い)。ある程度年齢を重ねてから内容において一定の読解はなしえたものの、「映画史を変えた作品」という枕詞や付随する豆知識の数々をサポートアイテムとして本作を観賞しており、本質を正しく捉えられているのかは、およそ今日までなかなか自信が持てないところではある。
ただ、『マトリックス』の脚本自体、制作前は「誰にも理解されなかった」という逸話があるくらいだから(そのため監督のウォシャウスキーコンビは、詳細まで視覚化したストーリーボードを用意したという)、これはひょっとすると当時も今も、一定数の人間が持っている感覚と言えるのかもしれない。
『マトリックス レザレクションズ』予告
だが、第3作『マトリックス レボリューションズ』(03)からおよそ18年ぶりの新章にして第4作『マトリックス レザレクションズ』において、この「『マトリックス』とは」論における、ひとつの“答え”が提示されたように感じている。その感慨こそが、個人的に最も大きな余韻として、エンドロールが流れる間中、胸の中でさざめいていた。
もっといえば、『マトリックス レザレクションズ』はその“ため”にあったのではないか?とさえ感じられる構造になっている。つまり、製作者自らが作中で「『マトリックス』とは何ぞや」を問い、苦悩し、最終的に答えを見出す――。そんなストーリーが、バックグラウンド的にではなく、前面に押し出されているのだ。
それぞれ(マルチ)の『マトリックス』が、或る一つ(ユニ)の『マトリックス』へと集約されていく――。『マトリックス レザレクションズ』は、そういった意味でもシリーズの集大成と呼ぶにふさわしい、大いなる“意義”をまとった内容と相成った。