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『マトリックス レザレクションズ』歴史的シリーズがたどり着いた、極私的な“答え” ※注!ネタバレ含みます。

©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『マトリックス レザレクションズ』歴史的シリーズがたどり着いた、極私的な“答え” ※注!ネタバレ含みます。

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複雑だが洗練された、“答え”を出す方程式



 『マトリックス レザレクションズ』のストーリー自体は、シンプルに捉えることが可能。ただ、つくり自体は非常に風変わりだ。「第1作をトレースする」部分もあれば、「過去作品の本編シーンが合間に挿入される」演出も設けられ、さらには「マトリックス(仮想世界)の中にいるネオは、『マトリックス』というコンピュータゲームを生み出したゲームデザイナー」というメタ的な要素も。しかもそのゲームの内容は、映画3作と全く同じだ。


 つまり、『マトリックス』内での現実世界と仮想現実に加え、私たちが生きる現実の要素も絡んでくるということ。まず『マトリックス』内での現実世界/仮想現実に絞ると、


 ・マトリックス内では、『マトリックス』(つまり、ネオの功績)がゲームとして伝わっている。作ったのはネオ/トーマス・アンダーソンという設定


 ・マトリックス内のネオは、記憶を失っている。いまはゲームデザイナー


 ・エージェント・スミスは同一人物(ただ、ある理由から見た目が違う)


 といった感じ。マトリックス内で、ネオの同僚たちがゲームの新作について是非を語り合う、という構造で、一世を風靡した『マトリックス』後の世界で、人々が本作を再考証する、というストーリーが展開する。つまり、劇中人物はゲームについて話しているが、観ている我々にとっては、『マトリックス』そのものとして受け取れる、という高度な仕掛けでもって、「『マトリックス』に答えを出すプロセス自体を描く」ことを正当化しているのだ。



『マトリックス レザレクションズ』©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.


 そこに、「私たちが生きる現実の要素」として、『マトリックス』『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』のシーンが挿入される。これはどちらかといえば我々観客に向けたチュートリアル的な要素、或いはコーション(警告)と考えられる。マトリックス内のネオ(今回はゲームデザイナー)とトリニティー(今回はティファニーという名の主婦)だけを見てしまうと、第1作のパラレルワールド的な物語に見えるだろう。


 ただそこで、過去作の映像が挿入されることによって、我々観客は「これは別宇宙や第1作から分岐した物語ではなく、『レボリューションズ』後の世界である」ことがわかる。この前提でもって機能し始めるのが、時間が経過したことによるこの世界の技術的な進化点だ。





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