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『マトリックス レザレクションズ』歴史的シリーズがたどり着いた、極私的な“答え” ※注!ネタバレ含みます。

©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『マトリックス レザレクションズ』歴史的シリーズがたどり着いた、極私的な“答え” ※注!ネタバレ含みます。

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テクノロジーの進歩=時代の経過を示す機能も兼任



 『マトリックス レザレクションズ』における独自要素の一つである、テクノロジーの進歩。それは同時に、この物語が「最も技術が進んだ時代=『レボリューションズ』以降の世界」という証明にもなる。


 一例を挙げるなら、人類と共存する機械「シンシエント」。これは、ネオが命懸けで「平和」を獲得せんと立ち向かったことによって生まれた、未来の形だ。『マトリックス レザレクションズ』では、人類と機械は必ずしも対立するものではない。人類と友好関係にある機械もいれば、空白期間には機械VS機械の「機械間戦争」も起こったことも示され、人類も機械もより多様な存在へと変化している。


 また、これまではマトリックス内のプログラムが現実に侵食してくることは、ほぼ不可能だったが、本作では粒子による「DSI(デジタル自己イメージ)」によって、現実世界でもプログラムが実態を得ることが可能に。また、プログラム内のセキュリティだったエージェントも見直され、マトリックス内にいる人間たちを強制的に操る「ボット」という技術が導入。これの「スウォーム」モードによって、命令を受けた群衆が一斉に襲い掛かるというド派手な演出も生まれた(建物の窓から人々が次々に落下してくる“人間爆弾”のシーンは強烈!)。



『マトリックス レザレクションズ』©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.


 その他にも、マトリックスからの脱出口として電話ボックスが不要になったり、マトリックスと現実をつなぐオペレーターが現実世界にいながらにして、音声だけでなく映像の形でもマトリックス内に存在できたりと、あらゆる部分にアップデートが見られる。これは「2021年を生きる観客がスムーズに受け取ることができる」効果ももたらしており、実にスマートだ。


 このように、『マトリックス レザレクションズ』はシリーズが歩んできた歴史を再構築しながら、新要素も巧みに盛り込み、4作目としての存在意義を説得力をもって感じさせる。そもそも『マトリックス』は、構造自体が「リアルがフィクションだった」というものであり、その中にメタ要素やパラレルワールド的な物語をストレートに組み込むと、他の作品と違ってうまく機能しない。この作品の中のリアル=絶対的に不変の現実という“保証”がないからだ。そのため、一つひとつを整理して提示していく必要性が生じる。本作は、再三述べている「『マトリックス』とは」に答えを出すための方程式を、実に丁寧に、かつ根気強く組み上げている印象だ。


 『マトリックス』内での現実世界/仮想現実+私たちが生きる現実の要素(過去作の映像)が組み合わさった構造は言葉で説明すると混乱するものかもしれないが、実際の物語を追っていく上では感覚的に「わかる」ものに整えられており、ラナ・ウォシャウスキー監督の卓越した筆力にはまたもやうならされる。





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