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『プリシラ』ソフィア・コッポラ監督  ビジュアルで物語を伝える志向性を貫いて【Director’s Interview Vol.398】

©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

『プリシラ』ソフィア・コッポラ監督  ビジュアルで物語を伝える志向性を貫いて【Director’s Interview Vol.398】

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選曲にはミュージシャンの夫の協力も



Q:そしてあなたの作品では音楽も重要です。今回の選曲について聞かせてください。


コッポラ:基本的に時代に合っている曲、およびプリシラの感情を代弁する曲を選びました。いくつか使用許可が下りない曲もありましたが……。脚本を書きながら、夫(トーマス・マーズ。バンド「フェニックス」のボーカル)の助けも借りて、このラブストーリーにふさわしいロマンティックな楽曲を探していったのです。夫が作った曲にもインスピレーションを受けましたね。ドリー・パートンの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は脚本を書きながら思い浮かんだのです。彼女があの曲の権利を保持するために苦労した経験が、プリシラの決意と重なると思い、使うことにしました。


Q:おそらく撮影していた頃に、もうひとつのエルヴィスの映画が公開されていたと思いますが、気になりましたか?


コッポラ:バズ・ラーマンの『エルヴィス』(22)は、本作の撮影が始まる前に観ましたが、全く方向性が違ったので影響を受けていません。同作にはプリシラが少ししか登場しませんから。この2作は、それぞれ別種の感情を描いていると思います。



『プリシラ』©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023


Q:インディペンデント映画の世界で活躍を続けるあなたにとって、現在の製作環境をどう感じていますか。


コッポラ:難しい状況は変わりません。アルゴリズムで視聴者へのオススメが表示される配信の活況で、独自の作品を製作するのはどんどん困難になっています。相変わらず製作の決定権や資金調達は男性がメインですし……。女性を主人公にした映画が人気を集めることもありますが、私はヒットを狙うのではなく、あくまでも作りたい映画を撮り続けたい。他とは違う新鮮な体験となる映画を待ち望む、若い観客が増えることを祈るしかありません。


Q:最後に改めて、この『プリシラ』が、あなたにとってどんな映画になったのかを聞かせてください。


コッポラ:一言で表現するのは難しいけれど、私は一人の人間が自分のアイデンティティを見つけることに興味があるのだと再認識しました。そしてこの時代は私の母の世代と強く結びついており、そこから私へ、そして私の娘へと変化したもの、さらに変わらず共有できるものなどに思いを巡らせる作品になったと思います。




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© Melodie McDaniel.

監督/脚本:ソフィア・コッポラ

2017年、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』でカンヌ国際映画祭史上2番目の女性監督として監督賞を受賞。監督デビュー作は『ヴァージン・スーサイズ』(99)。ピュリッツァー賞を受賞したジェフリー・ユージェニデスの同名の小説を映画化し、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された。次作『ロスト・イン・トランスレーション』(03)はトロント国際映画祭、ベネチア国際映画祭、テルライド映画祭で上映され、アカデミー賞脚本賞を受賞、監督賞と作品賞にもノミネート。長編脚本・監督第3弾は、『マリー・アントワネット』(06)。アントニア・フレイザーによる伝記『マリー・アントワネット』の一部を原作とし、カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。『SOMEWHERE』(10)は、コッポラが脚本、監督、製作を務め、第67回ベネチア国際映画祭でプレミア上映され、金獅子賞を獲得。その他、実際に起きた事件をベースに、ハリウッドでスリリングな窃盗を繰りかえし、世を騒がせた少年少女らの様子を描いた『ブリングリング』(13)、コッポラが脚本、製作総指揮、監督を務めた『ビル・マーレイ・クリスマス』(15)、ラシダ・ジョーンズ、ビル・マーレイ、マーロン・ウェイアンズが出演する『オン・ザ・ロック』(20)などがある。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。





『プリシラ』

4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

配給:ギャガ

©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

監督写真 / © Melodie McDaniel.

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