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『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』相原裕美監督 音楽業界の経験がもたらすもの【Director’s Interview Vol.407】

『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』相原裕美監督 音楽業界の経験がもたらすもの【Director’s Interview Vol.407】

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音楽業界の経験がもたらすもの



Q:『音響ハウス Melody-Go-Round』でも多くのミュージシャンや音楽業界の方が出演されていて、相原さんのキャリアが活かされています。音楽をテーマにしたドキュメンタリーの監督は元々やりたかったことだったのでしょうか。


相原:実は『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』は、たまたま監督をすることになったんです。『SUKITA〜』は当初別の監督を立てていたのですが、その人が超売れっ子だったこともあり、スケジュールが合わなくなってしまった。ロンドンに行って撮影する必要もあるし、鋤田さんからも「どうするんですか?」と…。それまでの自分のキャリアはプロデューサーがメインでしたが、『SUKITA〜』はドキュメンタリーだし元々は自分が考えた企画、まぁ監督も出来ないことはないかなと。それで「じゃあ、僕が監督をやります」と始めたのが『SUKITA〜』でした。


『音響ハウス〜』は『SUKITA〜』のマスコミ試写の際に、昔からの知り合いの音響ハウスの社長から「PR映画を作りたい」という話からスタートしたもの。1本やって大体勝手もわかっていましたし、また監督をすることになりました。だから“流れ”で監督をやることになった部分は大きいですね。


今回はちょうど3作目ということもあり、音楽をやっている人、音楽家を扱いたいと思っていました。そう思っていた時に、ちょうど幸宏さんからトノバンの話があったんです。



『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』ⓒ2024「トノバン」製作委員会


Q:本作は多くの方のインタビューによって構成されています。この構成にした意図があれば教えてください。


相原:途中で泣き叫んだりするようなドキュメンタリーが嫌いでして(笑)。監督の演出が入りすぎているものはドキュメントではないなと。それだったら劇映画を作った方が良い。取材相手のキャラクターも含めて淡々と映し出すのがドキュメントだと思っているので、それで色んな人の証言を集めた構成にしました。今回はメインとなる人物が加藤さんですが、その人物を炙り出していくことこそがドキュメントなんだろうなと。


Q:証言されている豪華なメンバーはどうやって決まったのでしょうか。


相原:今年5月に復刻した「あの素晴しい日々 加藤和彦、「加藤和彦」を語る」というインタビュー本があるのですが、それに基づいている部分が大きいですね。ある意味、その本がこの映画の背骨のような感じになっています。


Q:錚々たるミュージシャンたちにとどまらず、プロデューサーのクリス・トーマスやレコード会社のディレクター、レコーディングエンジニアなど、裏方の話も面白いです。スタジオのスピーカーを全部取り替えた話や、レコーディングするテープを切ってつなげる話など、驚きもありました。


相原:テープには16チャンネルのトラックが入っているので、昔は普通切らなかったんです。1つじゃなくて16の音が全部入ってるやつを切っちゃうなんて、昔はありえなかった。74年当時はそうでしたが、80年代になったら普通に切るようになってましたね。実際に僕も切ってました。そういうレコーディングの中身みたいなところは、音楽業界を経験している自分だからこそ判る話かなと。それでその辺りのエピソードも入れてみたんです。



『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』ⓒ2024「トノバン」製作委員会


Q:映画の後半では豪華なトリビュートバンドも登場します。このバンドは相原さんの声がけで集まったのでしょうか。


相原:音楽プロデューサーの牧村憲一さんの力が大きいですね。牧村さんはすごいプロデューサーですよ。最初のキャリアは「中津川フォークジャンボリー」のスタッフから始まって、小室等さんの「六文銭」のマネージメント、シュガー・ベイブにも関わり、大瀧詠一さんの「サイダー73」のディレクターもやっていました。大貫妙子さんもずっと担当されていましたね。竹内まりやさんを見つけてデビューさせて、彼女の事務所の社長もやっていましたし、89年にはフリッパーズ・ギターを見つけてデビューさせている方です。もちろん加藤さんともお付き合いがあって通称「ヨーロッパ三部作」の「うたかたのオペラ」「ベル・エキセントリック」のアルバムのときにアシスタント・プロデューサーをやられてました。


牧村さんはロック、フォークの黎明期からお仕事をされていて、そのときの熱い気持ちみたいなものを何か形に残したいと、いろんな本を書かれたりトークイベントをやったりしていて、僕はそこで知り合いになったんです。今は色々と一緒に仕事をしていて、今回のトリュビュートバンドも「ディレクターは高野(寛)くんにしよう」と牧村さんが提案してくれました。




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