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『ストップ・メイキング・センス』トーキング・ヘッズ×ジョナサン・デミが生み出した、“体感”する音楽映画

(c)Photofest / Getty Images

『ストップ・メイキング・センス』トーキング・ヘッズ×ジョナサン・デミが生み出した、“体感”する音楽映画

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『ストップ・メイキング・センス』あらすじ

70年代のニューヨークの刺激的な雰囲気の中で結成されたロック・バンド、トーキング・ヘッズの絶頂期を映像として残したバンド映画。当時、彼らはバンドとしては青春真っただ中。舞台を汗だくになって駆けまわる、ヴォーカル、ギター担当のバーンの才気と狂気があふれるパフォーマンスに圧倒される。実力ある3人の黒人ミュージシャンや2人の黒人女性のコーラスとのコンビネーションにもスポットが当てられている。人物から人間的な魅力を引き出すのがうまいジョナサン・デミ監督の演出により、当時の彼らのパフォーマンスを追体験することができる。


Index


映画史に名前を刻んだバンド、トーキング・ヘッズ



 スパイク・リー監督がアメリカの知性派ミュージシャン、デイヴィッド・バーンと組んだ『アメリカン・ユートピア』(20)は最高にエモーショナルで楽しいライブ映画に仕上がっている。すでに60代となったバーンの集大成ともいえる内容だが、この映画を見ると、バーンがトーキング・ヘッズ在籍時代に出演したコンサート映画『ストップ・メイキング・センス』(84)を見直したくなる。


 『羊たちの沈黙』(91)で知られるジョナサン・デミがオスカー監督になる前に手掛けた低予算映画だが、80年代に日本のミニシアターでも大ヒット。ロック系映画は日本では興行が厳しい、というジンクスを破った伝説的な作品で、今でも根強い人気を誇っている。公開からすでに35年以上が経過したが、トーキング・ヘッズというバンドにとってすごく重要な意味を持つ作品ではないだろうか。もし、このタイミングで、この映画が作られていなければ、このバンドの立ち位置は今とは異なるものになっていたはずだ。


『ストップ・メイキング・センス』予告


 ロック・バンドといっても、日本では誰もが知っている大衆的なバンドではなく、通受けバンドのイメージが強かったトーキング・ヘッズ。しかし、この映画が傑作だったことで、彼らは音楽映画の歴史にも名前を残すことができた。このバンドはもともと映像を使うのがうまく、彼らのポップなテイストのミュージック・ビデオを集めた『ストーリーテリング・ジャイアント』(88)はグラミー賞候補にもなっている(バーン自身が監督した作品も何本か収録)。

 

 主にヴォーカル、ギター担当のバーン、ドラムのクリス・フランツ、ベースのティナ・ウェイマスが結成当時のメンバーだが、彼らはロード・アイランド・スクール・オブ・デザインの出身者。最初はアート系の仕事をめざしていたが、パンクロックが登場した70年代のニューヨークの刺激的な雰囲気の中で、たまたまバンドを始めて成功した。この3人にハーバード大学で建築を学んだギタリスト、ジェリー・ハリソンが加わることで、70年代後半にニューウェイヴ系のバンドとしてレコード・デビューを飾り、80年に革新的なアルバム『リメイン・イン・ライト』を発表することで、よりメジャーなバンドへと成長した。


 そして、『ストップ・メイキング・センス』が作られることで、彼らの絶頂期のライブが最高の映像として残されたのは本当に幸運だった。当時のバーンは30代前半だが、バンドとしては青春真っただ中。舞台を汗だくになって駆けまわる、バーンの才気と狂気があふれるパフォーマンスに圧倒される。ただ、彼だけにスポットが当てられるわけではない。他の3人のメンバー(キュートで利発そうなティナ、彼女の夫である気の良さそうなクリス、凝り性っぽいジェリー)、実力ある3人の黒人ミュージシャン(バーニー・ウォーレル、スティーブ・スケール、アレックス・ウィアー)や2人の黒人女性のコーラス(エドナ・ホルト、リン・メイブリー)とのコンビネーションも最高で、メンバーたちの勢いにこちらも乗せられる。


 『ストップ・メイキング・センス』は、トーキング・ヘッズの青春映画として不滅の輝きを放っている。




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