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『ヒットマン』リチャード・リンクレイター監督 ジャンルを合体させて見たことのないものを【Director’s Interview Vol.430】
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二つのジャンルを合体させる
Q:本作には「アイデンティティ」という哲学的なテーマが根幹にあります。物語を作るにあたり、テーマはどのように決めているのでしょうか。
リンクレイター:作品によって変わりますが、今回は自ずとテーマが浮かび上がってきました。話を作っていく中で、「なるほど、これはヒットマンの物語でありながら、核の部分で語りたいのは哲学なのか」という具合に、徐々に分かってくるんです。そこまで深掘りすると、次は自分のことが出てきます。つまり「自分が興味のあるテーマ、語りたいことは何だろう?」とね。
そしてキャラクターを考えていくと、「あの映画の感じかな」「こういうジャンルもいいな」と色々浮かんでくる。今回は、僕が好きなプレストン・スタージェス的なドタバタ劇と、フィルムノワール的ヒットマン映画を掛け合わせました。そうやって、今まで誰も見たことがないものを、過去の色んなジャンルを合体させて生み出していく。
もはや完全なるオリジナルというものは存在しません。いつも過去の要素を拾いながら作っています。今回は二つのジャンルを合体させて、これまで見たことのない新鮮な映画を作ったつもりです。ジャンルをそのまま描いても、そこに面白さは感じない。いつも何か“一捻り”が欲しいんです。
『ヒットマン』© 2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
Q:あなたはジャンルを横断しながら実験的で新しい映画を作り続けてきました。ハリウッドで自分のやりたいことを続ける秘訣は何でしょうか。
リンクレイター:秘訣という秘訣は無いのですが、そもそも僕はハリウッドから遠く離れたところで映画作りをしている、いわゆるインディーズ監督です。ハリウッドのサポートがあって作った映画も何本かありますが、僕が生きている世界とハリウッドは全然違うし、ハリウッドに住んだこともなく、ハリウッドで仕事をしたこともない。ここ30年の間、インターナショナル・インディーズ・フィルムメイカーとして生きて来ました。
これまで映画を作ってこられたのは有難いことだし、僕は時代が良かったのかもしれません。インディーズの世界はあまり変わっていないと思いますが、ハリウッドのスタジオは変わりましたね。今の若手は才能があればすぐにハリウッドから声が掛かって、すぐに大作を撮れるようになりました。それが良いことかどうか僕には分かりません。どちらにしても、僕がハリウッドで活躍する隙なんて無いと思っています。自分の作品作りをしている監督はリスペクトしていますけどね。
監督/脚本/製作:リチャード・リンクレイター
オースティン映画協会の芸術監督を務める。同協会は、レパートリー・シアターの運営、映画スタジオの管理、テキサス州の映画製作者への220万ドルを超える助成金交付などを行う国内最大級の映画団体である。主な長編映画は『バッド・チューニング』(93)、『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離<ディスタンス>』(95)、『スクール・オブ・ロック』(03)、『ビフォア・サンセット』(04)、『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』(05)、『ビフォア・ミッドナイト』(13)、『6歳のボクが、大人になるまで。』(14)、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(16)、『30年後の同窓会』(17)、『バーナデット ママは行方不明』(19)、『アポロ10号 1/2:宇宙時代のアドベンチャー』(22)など。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『ヒットマン』
9月13日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:KADOKAWA
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