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『五香宮の猫』想田和弘監督 日常の「観察」から、いかにしてドラマはたちあがるのか【Director’s Interview Vol.444】

『五香宮の猫』想田和弘監督 日常の「観察」から、いかにしてドラマはたちあがるのか【Director’s Interview Vol.444】

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猫から見えてきた共存の知恵



Q:印象的だったのが町の会合のシーンです。猫の糞の問題を議論するときにお互いを責め合ったりせずに立場を慮って、ソロリソロリと発言する感じが好ましいと思いました。昔の村の寄り合いも、ああいう感じだったんだろうなと。


想田:そうだと思います。悪く言えば「なあなあ」なんですけど、でもそれがもしかしたら共存の秘訣かもと思います。狭い町内だし、お互いがお互いから逃げられないわけですよ(笑)。


Q:ケンカしちゃったら、そこから何十年も…。


想田:もう大変です。毎日顔を合わせるしね、ずっと気まずい思いをしなくてはいけないわけです。だから意見が対立することがあっても、相手をやり込めたりとか白黒つけようとするのではなく、ある意味「なあなあ」。よく言えば「良い加減」。



『五香宮の猫』© 2024 Laboratory X, Inc.


Q:「面倒だから多数決で」ということはせず、ひたすら妥協点を探り続ける。実は日本にも古来から民主主義的な文化があったのではないかと思わせてくれます。


想田:日本の伝統的な社会というと非民主的なイメージがありますが、実はかなり民主的な共存の知恵が身体化している部分があると感じます。僕はニューヨークに27年住んでいたのですが真逆の世界。何でも議論して、どちらが正しいかをはっきりさせる。僕もそういうことをしがちだったのですが、今はそれでは社会が分断してしまって、結局はうまくいかないと思っています。敵と見なしているような人たちとも同じコミュニティ、同じ国、同じ地球を共有していかないといけないわけですから、何とか折り合いをつけていく方法を見つけないといけないですよね。


Q:そういうことが地域の猫を観察していたら見えてきたんですね。


想田:そうそう、猫からそこにいく(笑)。





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