『こちらあみ子』(22)で鮮烈な監督デビューを果たした森井勇佑、待望の2作目は独自の世界観に包まれたロードムービー。主演に綾瀬はるかを迎え、旅の相棒役を『こちらあみ子』で圧倒的な存在感を示した大沢一菜が演じている。森井監督と大沢一菜、『こちらあみ子』でデビューした者同士が再びタッグを組んだわけだが、二人はいかにして本作『ルート29』を作ったのか。
監督と役者という二人の関係性は、友人、親子、兄妹、先生と生徒のように見えつつも、実際はそのどれとも似て非なるものだった。二人の会話からそのユニークな関係性が浮かび上がってきた。
『ルート29』あらすじ
他者と必要以上のコミュニケーションをとることをしないのり子(綾瀬はるか)は、鳥取の町で清掃員として働いている。ある日、仕事で訪れた病院で、入院患者の理映子(市川実日子)から「姫路にいる私の娘をここに連れてきてほしい」と頼まれた彼女は、その依頼を受け入れ、単身で姫路へと向かう。理映子から渡された写真を頼りに、のり子が見つけることができたハル(大沢一菜)は、森の中で秘密基地を作って遊ぶような風変わりな女の子だった。初対面ののり子の顔を見て、「トンボ」というあだ名をつけるハル。2匹の犬を連れた赤い服の女、天地が逆さまにひっくり返った車の中に座っていたじいじ、「人間社会から逃れるために旅をしている」と語る親子、久しぶりに会った姉など、さまざまな人たちと出会いながら、姫路から鳥取まで一本道の国道29号線を進んでいく2人の旅が始まった──。
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たまに会って鬼ごっこしてました
Q:『こちらあみ子』から今回の撮影までどれくらいの時間が経っていたのでしょうか。
森井:撮影自体は2年ぶりかな?
大沢:2年ぶり。でもたまに会って遊んでた。
森井:そう、たまに一緒に遊んでたんです。だから久しぶりって感じはあまりなかったですね。
Q:撮影中、大沢さんは何年生でしたか。
大沢:『こちらあみ子』のときは4年生の夏で、『ルート29』は6年生の夏。今は中学1年生。
Q:ハルは大沢さんありきのような役でしたが、当て書きされたのでしょうか。
森井:本人に怒られるんじゃないかっていうくらい当て書きです(笑)。まぁ怒られなかったので大丈夫でしたけど。劇中、ハルが「お前ら囚人だ、並べ」と言っているシーンは、一菜と公園で遊んでいるときのエピソードです。一菜の友達と僕が突如囚人として並べられ、公園を「イチニ、イチニ」ってしばらく歩き回らされました(笑)。それを元にしています。
大沢:懐かし〜(笑)。
森井:『こちらあみ子』が終わった後に何度か一緒に遊ぶ機会があったんです。一菜に呼ばれて公園に行くと一菜が友達たちと一緒にいて「今から鬼ごっこをやるから」と(笑)。しかもテレビの「逃走中」みたいな“街中鬼ごっこ”なんですよ。「監督、鬼な!」って言われて、何秒か数えて周りを見るともう誰もいない。街に出て探しても誰もいないし、ウロウロしてたら一菜から電話が掛かってきて「終わったから戻って来て」と(笑)。
劇中に“鮭師匠”というキャラクターが出てくるのですが、鮭師匠は一菜がずっと師匠として慕っている“タコ師匠”という実際の人がモデルです。そのまま使うとさすがに怒られるかなと思ったので、鮭師匠に変えて出させてもらいました。タコ師匠は一菜の親友だと思うんです。だから映画の中でも、鮭師匠はハルの一番の友達になっています。
『ルート29』©2024「ルート29」製作委員会
Q:本作のオファーが来た時の感想を教えてください。
大沢:また監督とやれる嬉しさがあって、また『こちらあみ子』のときみたいな現場に行けると思って、楽しみでした。
Q:初めて脚本を読んでみていかがでしたか。
大沢:監督らしいなと思ったのと、ハルはやっぱり自分をモチーフにしてるのかなと。
Q:綾瀬さんとの共演を知った時はいかがでしたか。
大沢:小ちゃい頃からずっと好きで、まさか一緒に共演できるとは思わなかったから、頭がめっちゃこんがらがって、最初は何も考えられなかった。
森井:綾瀬さんに決まった時は、一菜から「神!」ってLINEが来ました(笑)。
Q:『こちらあみ子』以来の大沢さんはいかがでしたか? ずいぶん背も伸びて大人になった感じもありました。
森井:大人になろうとしている感じはしましたね。現場に「おはようございます」って入って来たんですよ。まずそこに驚きましたね。
Q:ハルはあみこがそのまま成長したような感じもしましたが、意図したものはありましたか。
森井:何か意図しましたか?
大沢:全然ないです。
森井:ハルは一菜への当て書きなので、自然とそうなっているところはあるかもしれませんね。