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『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』リドリー・スコット監督 撮影の数ヶ月前にすでに映画は完成されている【Director’s Interview Vol.451】
2000年に公開され、アカデミー賞作品賞に輝いた『グラディエーター』は、リドリー・スコット監督の代表作のひとつとなった。24年ぶりとなる続編『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』は、そのスコットが自らメガホンをとったわけだが、彼が自身の監督作の続編、あるいはシリーズを手がけるのは『エイリアン』(79)を起点にした『 プロメテウス』(12)、『エイリアン:コヴェナント』(17)に次いで2度目。それだけ愛着がある作品ということなのだろう。
『グラディエーター』続編の話は1作目の直後から浮上しており、満を持しての完成となる。主人公がラッセル・クロウ演じるマキシマスから、その息子であるルシアス(ポール・メスカル)へと受け継がれ、新たな英雄=グラディエーターの誕生をわれわれは目にすることになる。なぜ続編に着手したのか。そしてどんな思いで作品を完成させたのか。2024年11月に87歳を迎える巨匠は、自宅からのオンラインインタビューにリラックスした表情で応じる(なぜか愛犬を抱きかかえる瞬間も!)。過去の作品を瞬時に例として挙げるなど、その受け答えはとにかく明晰。衰え知らずの意気軒昂な姿を見せてくれた。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』あらすじ
ローマ帝国が栄華を誇った時代―。ローマを支配する暴君の圧政によって自由を奪われたルシアス(ポール・メスカル)は、グラディエーター(剣闘士)となり、コロセウム(円形闘技場)での闘いに身を投じていく。果たして、怒りに燃えるルシアスは帝国への復讐を果たすことができるのか。
Index
主役が父から息子に受け継がれるアイデア
Q:いつか『グラディエーター』の続編を作りたいという願望は、つねに持っていたのでしょうか。
スコット:多くの人から『グラディエーター』が一番好きな映画だという声を受け取っていたので、「ならば続編を作れないこともないだろう」とは、つねに思ってきた。ただ他の作品が続いていたので着手するまで長い時間がかかってしまったんだ。
Q:前作で亡くなったマキシマスがこの世に戻ってくるという脚本が存在していたそうですが……。
スコット:確かにその脚本はチャレンジングだったが、物語の方向性がうまくまとまらず、一度企画を手放すと決めた。そこから約2年間、続編の話を寝かせていたところ、あるアイデアがひらめき脳裏から離れなくなった。それが「マキシマスに生き残った息子がいて、皇帝の血筋を引くため命が狙われかねず、それを恐れた母親が息子を遠くへ追いやる」という本作の原型だ。
Q:マキシマスの息子という新たな主人公が生まれたのですね。
スコット:脚本を書き進めている間に「ふつうの人々」(20 TV)というTVシリーズを気に入り、一気見してしまった。そこで主役を務めたポール・メスカルに「リチャード・ハリスの孫をやらせたら説得力があるかもしれない」と感じたんだ。ハリスは前作でマルクス・アウレリウスを演じた役者だ。ポールはルックスだけでなく、舞台経験も豊富。十分な力量があると踏んで出演を打診した。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』©2024 PARAMOUNT PICTURES.
Q:ポール・メスカルとリチャード・ハリスは共にアイルランド出身ですね。ただ作品を観るとポールの声は(マキシマスを演じた)ラッセル・クロウにも似ていると感じました。
スコット:ポールはアイルランドのラグビー選手のような雰囲気なのでラッセルと似ているとは思わないが、2人とも声は素晴らしいね。ラッセルも舞台から映画に転向したから、セリフ回しでそう感じるのかもしれない。この映画は主人公がコロセウム(円形競技場)のアリーナから観衆に語りかける。そこでのセリフは演劇的なので、彼らの才能に共通点を見出せるのだろう。
Q:その他のキャスティングについてこだわりを聞かせてください。
スコット:主人公ルシアスの復讐相手となるアカシウス役ペドロ・パスカルはドラマ「ナルコス」(15〜17 TV)を観て気になっていた。真っ先に思い浮かんだキャスティングではなかったが。結果として良いチョイスだったね。もう一人、極悪非道ともいえるキャラクターのマクリヌスについて、私はスタジオに「ぜひデンゼル(・ワシントン)を」と提案したところ快諾してくれた。私は絵画など視覚的な素材から着想を得る傾向がある。時代モノを作る時は特にその傾向が強く、『ナポレオン』(23)でも多くの名画を参考にした。写真のない時代は、絵画が“生き証人”だからだ。今回はジャン=レオン・ジェロームという、ローマ帝国や北アフリカの国をファンタジックに描いた19世紀のフランスの画家に影響を受けた。彼の「The Moor」という絵画に、オレンジの絹の服に真っ青なターバンを巻いた男がいて、私はそれをデンゼルに送り「こういう感じで演じてほしい。剣闘士の手配師役だ」と説明したところ、彼は「ぜひやりたい」と返事をくれたのさ。