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『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』リドリー・スコット監督 撮影の数ヶ月前にすでに映画は完成されている【Director’s Interview Vol.451】

©2024 PARAMOUNT PICTURES.

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』リドリー・スコット監督 撮影の数ヶ月前にすでに映画は完成されている【Director’s Interview Vol.451】

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人生の糧となった美術大学での経験



Q:前作では剣闘士=グラディエーターとトラの闘いが見どころになりましたが、今回はさらに驚くべき対戦相手の野獣たちが登場します。これはあなたのアイデアなのですか?


スコット:それが監督としての私の仕事だからね(笑)。脚本家と緊密に連携してストーリーを構築するわけだが、今回のヒヒ(サル)やサイ、サメといった突飛なアイデアは私のもの。これらを使ったアクションをどう演出するか、そこを心得たうえでのアイデアだ。私の人生で最も糧になったのは美術大学での経験だ。本格的な絵画やスケッチを描くことができるので、映画のストーリーボードも分厚いコミックブックのようなものを作ってしまう。撮影の数ヶ月前には、「絵で描いた映画」が一本できあがっているようなものだ。そのストーリーボードを各部門で共有することで野獣との格闘をどう映像化すべきかの参考になり、効率良く製作が進むんだ。私がストーリーボードを描くことで、製作費が1,000万ドルくらい浮いたんじゃないかな(笑)。


Q:ストーリー自体にもあなたの志向が生かされているのですね。


スコット:私の場合、完成された脚本をそのまま撮るスタイルは稀だ。つねに脚本家と何週間も膝を突き合わせて作業する。脚本を受け取ってから撮った最後の作品は『オデッセイ』(15)かな。「どんな風に撮りますか?」と聞かれ、「これはコメディだね」と答えたら、スタジオ側に驚かれたけど。だって自分の排泄物を肥料に作物を栽培する男の話じゃないか。どう考えてコメディだろ(笑)?



『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』©2024 PARAMOUNT PICTURES.


Q:今回の撮影もマルチカメラ(複数のカメラで同時に撮影)を多用したそうですね。


スコット:カメラは最大で11台使っている。会話のシーンはマルチカメラで撮ることで役者から自由な演技を引き出せる。特に子役には最適だ。本作では猿が走り回るが、カメラ4台で猿を追った。そうすることで猿と人間の役者の動きを多方向からとらえた映像が残り、編集者に選択肢を与えられるんだ。


Q:あなたは以前から映画における編集の重要性を力説しています。


スコット:私が作品を撮る時、どういう映像に仕上げたいのか、頭の中に明確なイメージがある。そのイメージを具現化するうえで、優秀な編集者が必要だ。ここ何年かはクレア・シンプソンに編集を任せている。振り返ると『ブラック・レイン』(89)のトム・ロルフも優秀だったが、その後、組むことはなかった。私は撮影初日から撮った素材を編集者に渡す。そして週末の土曜の朝に繋いだ映像を確認する。そうすると撮影終了時には半分くらい編集が終わっていることになる。この流れは優秀な編集者でないと成立しない。完全に撮影が終わるまで編集作業に移らない監督もいるが、そんなことをしていたら一作に2年くらいかかってしまう。私だったら痺れを切らしてしまうよ。小説を書く場合にも優秀な編集者が必要だろう? 書き替える必要性を提言し、作品を洗練させる役割が彼らにはあるんだ。





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