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『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』制作統括:橋本トミサブロウ × アニメーションプロデューサー:董哲 フルCGを作画でなぞるという挑戦 【CINEMORE ACADEMY Vol.34】

※向かって左より、董哲氏、橋本トミサブロウ氏。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』制作統括:橋本トミサブロウ × アニメーションプロデューサー:董哲 フルCGを作画でなぞるという挑戦 【CINEMORE ACADEMY Vol.34】

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日本アニメと海外向けアニメの違い



Q:海外スタッフの参加が多かったようですが、そういったネットワークは元からお持ちだったのでしょうか。


橋本:そうですね。弊社は社長も外国人ですし、CGスタッフもワールドワイド。作画に関しても、董くんの出身である中国を筆頭に色々な国の方が携わっています。国内の人口は減っていますし、それに伴ってアニメーターの数も減ってきている。一方で、海外でのアニメ人気が上がるに伴い、日本のアニメに参加したいという海外のアニメーターが増えています。そこのネットワークを作ることに抵抗はありませんし、ピクサーやドリームワークスもしかり、世界中の人と一緒につくる座組は増えてきています。


Q:日本国内に向けたアニメと、最初から世界に向けて作る日本アニメとでは、具体的に何が違うのでしょうか。


橋本:キャラクターデザインの違いは大きいですね。そして、そこの調整はすごく難しい。北米がターゲットであれば、劇画のように頭身が高くてハードにすべきですが、日本アニメとして違和感がある造形では成立しません。かといって、いわゆる“萌えアニメ”のようなキャラクターでは『ロード・オブ・ザ・リング』の世界観には合わない。そこの落とし所を探るのは時間がかかりました。キャラクターデザインの高須美野子さんも苦労されていましたし、かなりのディスカッションを経て今のビジュアルに落ち着きました。


物語の内容は原作があるので、国内と海外で違いを意識する必要はありませんでしたが、主人公が女性というところはすごく気を遣いました。国を守る主人公なので強くあるべきですが、ただのマッチョな女性だと誰も好きになれない。主人公は皆に愛されなければいけないという宿命を背負っていますから、優しさや懐の深さ、頭の良さ、そして美しさも必要になってくる。今はジェンダーについての扱いがすごく難しいので、絶妙なバランスで着地させたと思います。



『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI


董:セリフが英語であることも大きな違いです。英語は先に答えを言うためにリアクションが先に来る。日本アニメの動きのパターンは全く通用しませんでした。リアクションが先に来ると、それに合わせて作画の手順も変わってしまう。そこは大変でした。


また、日本でよくある3枚だけの口パク(リップシンク)では寂しいので、今回は独自のルールを適用して、口パクの枚数を多めにしました。ただしそれも初めての経験なので、とにかくセリフが口の動きとズレてしまう。音声をパソコンソフトに入れてその波形を見ながら口パクをつけていました。英語の発音と口パクをシンクロさせるのは大変でしたね。


橋本:さらに制作途中でセリフが変わったりするので(笑)。その度に変えなきゃいけないので、かなり大変そうでした。





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