俳優と話す意義
Q:主演の長塚京三さんとは撮影前の読み合わせを重ねられたそうですね。
吉田:読むというよりも、実際は読むことを口実にいろいろと話すんです。脚本を真ん中に置いて、この役について、この物語について、近い距離で話す機会を持つことが大事。読み合わせの合間に休憩して話していると、お互いのことがだんだん分かってくる。「こういうことを気にしているんだな」「こういうことに興味があるんだな」と、長塚さんが儀助という役に近づいていく様子も感じることが出来て、すごく有意義な時間でした。
Q:普段から読み合わせは重視されているのでしょうか。
吉田:場合によりますが、俳優と話す時間を長く持って撮影に臨むことは多いですね。
『敵』ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
Q:俳優たちにモノクロであることを最初は伝えなかったとのことですが。
吉田:そんなはずはないと思うんですけどね(笑)。なぜなら衣装合わせのときにモノクロでチェックしているはずですから。でも、「いや、言われてない」と結構複数から反論されてしまいました。説明したつもりで実はしてなかったというのは、僕にはよく起こることなので、別に狙いがあって伏せていたわけではなく、単純に僕が行き届かなかった。モノクロという大事な要素をあえて伝えないで撮影されると、俳優の方は何か意図があると思いますよね。でも全然そんなことはなかったんです。