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『敵』吉田大八監督 自分が観たい映画を作る【Director’s Interview Vol.464】

『敵』吉田大八監督 自分が観たい映画を作る【Director’s Interview Vol.464】

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前作からの反動



Q:モノクロでの撮影しかり、今回はこれまで培ってきたものを極力削ぎ落とそうとされているような印象がありました。意図されたものはありますか。


吉田:前作『騙し絵の牙』は、自分にしては比較的たくさんの俳優さんに出てもらって、映画のスケールも大きかった。その反動もあって、出来るだけ小さいものに向かいたいという無意識な気持ちがあったのかもしれません。意図的に前作を否定するということでなく、やることを都度変えたいと思う質ではあるので、それくらい単純な理由で小さな世界の話に向かったのだと思います。


Q:ラストに向かっていく感じやカタルシスは、『クヒオ大佐』(09)『美しい星』(17)などと似たものを感じました。


吉田:もう志向なんでしょうね。『クヒオ大佐』や『美しい星』、そして『敵』にしても、プロデューサーから持ち込まれた企画ではなく、自分からプレゼンして進めた企画なので、自然と傾向は似るのだろうなと。スロースタートで最後にまくる感じなどは自分が好きでやっているので、結局似てしまう。『クヒオ大佐』や『美しい星』とはまた違う…、と言われた方がもっと嬉しいので、今後はそれを目指して頑張っていきたいと思います。



『敵』ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA


Q:製作にも名前がクレジットされ、企画の発端も監督ご自身ですが、これまでの映画製作と比べて内容への自由度は高かった感覚はありますか。


吉田:「作りたいものを作ろう」という企画だったので、クリエイティブ上のことで何かを我慢したり、曲げたりした記憶はないです。とはいえ実はこれまでも、そんなに我慢はしてこなかったつもりですが、今回はちょっと不安になるぐらい自由だったかもしれません。元々CMの人間なので、完全な自由にはいまだに慣れない。制限があったらあったなりに、それを利用してクリエイティブを作るタイプではあるので、「誰もダメって言わないけど大丈夫かな?」と勝手に心配になって。だから、映画祭で褒めてもらえたり、観た人から面白かったと言ってもらえると、ホッとする度合いがこれまでの映画とはまた違います。そこの責任が自分に掛かっている度合いも、いつもよりは大きいですね。




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