スナイパーのプロから学んだ孤独な感覚
Q:複数のジャンルを感じさせる作品とはいえ、メインに据えられたのはどんなテーマだと思いましたか?
テラー:やはりラブストーリーでしょうか。製作のプロセスの中で、そこに重点が置かれているのを感じていましたから。ですからアクション場面で何かと戦っている時も、主人公たちの恋愛関係を意識しました。僕が演じたリーヴァイが相手のドラーサをつねに気にかけるところは、他のアクション映画とは一線を画す深みになったと思います。
テイラー=ジョイ:私もマイルズの意見に賛成します。「この映画のポイントを説明して」と質問されたら、「特殊な訓練を受け、特殊な仕事を与えられた2人のラブストーリー」と答えるでしょう。
Q:有能なスナイパー役ということで、どんなトレーニングを積んだのですか?
テイラー=ジョイ:私とマイルズはそれぞれ別のプロフェッショナルから訓練を受けました。1人はアメリカ軍、もう1人はリトアニア軍での経験を持つ人。ですから違うスタイルを身につけたと言えます。初めて手にした銃は確実に“異物”だったのですが、1日の長い時間を銃を手にして過ごすことで、肉体の一部になっていきました。そして心理的にもスナイパーに近づくことで、ドラーサ役の内側に入り込めたんです。私はけっこう完璧主義で、とにかくパーフェクトな銃撃を映像で残すことにこだわりました。実際に相手を撃つというのではなく、それらしく見せること、その職業になりきることは、他のどんな役にも通用するのだと実感できました。
Apple Original Films『深い谷の間に』画像提供 Apple
テラー:映画業界でいつもありがたいと感じるのは、どんなスキルであっても、世界最高の専門家から作品に必要な訓練を受けられること。スナイパーは、軍隊の他の役割よりも孤独を感じる仕事です。僕は元兵士の専門家から、遠くの標的に対する心構えと、その経験を学びました。われわれ一般人には想像できない感覚で、それを身につけることで、長い時間一人だけで過ごし、標的を見つけるリーヴァイの演技を作っていったのです。
Q:それぞれの役を演じながら、ドラーサとリーヴァイの関係をどのように捉えましたか?
テイラー=ジョイ:相手役がマイルズだったから、この関係性を楽しんで演じられた気がします。ドラーサは自分の立ち位置にクールに対処しつつ、父親との関係から自分の弱点を受け入れてくれる人も求めています。だからリーヴァイと心を通わせた時、明るさを取り戻すし、彼を救うことに喜びを感じるのではないでしょうか。
テラー:ドラーサの監視塔は音楽に溢れて楽しそうだったよね(笑)?
テイラー=ジョイ:たしかにレコードがあったし、ケーキを焼いたりして楽しみはたくさんあったかも。リーヴァイが私の塔に来ることで、家庭的なムードになるわけです。「世界には明るい光もある」と2人は感じたことでしょう。そうやって恋におちるプロセスが、私は大好きでしたね。
テラー:リーヴァイはスナイパーの技術は備えているけれど、家族は存在しません。彼を恋しく思う人はどこにもおらず、つまり命令に従順な“使い捨て”の男でした。そんな彼が自らの判断で行動を起こし、支配している側を打ち負かそうと変貌するわけです。