そこは誰も足を踏み入れることのできない謎めいた渓谷。深く、広大なその谷の両壁には監視塔が建ち、それぞれ有能なスナイパーが極秘任務で配置されている……。かつてないシチュエーションで驚愕のアクションが展開していく『深い谷の間に』で、主人公の2人のスナイパーを演じたのが、『マッドマックス:フュリオサ』(24)のアニャ・テイラー=ジョイと、『セッション』(14)や『トップガン マーヴェリック』(22)のマイルズ・テラーだ。谷の両壁で孤独に任務をこなすドラーサとリーヴァイは、外部との連絡も遮断されつつ、相手の存在を確認しながら、やがて接触を試みる。2人の運命はどうなっていくのか。そして谷には目を疑うような秘密が隠されている……。演じるにはハードルが高いこの役に、実力と人気を兼ね備えた彼らがどんな思いで挑んだのかを聞いた。
Apple Original Films『深い谷の間に』あらすじ
高度な訓練を受けたスナイパーの2人(マイルズ・テラーとアニャ・テイラー=ジョイ)が、別々に、広大な峡谷の両側にある監視塔に配置され、谷に潜む何かから世界を守る極秘使命を与えられる。2人は見えない謎の敵を警戒しながら、谷を挟んだ離れた場所で絆を深めていく。そして、人類への壊滅的な脅威が明らかになった時、彼らは峡谷の秘密を守るため、ともに戦う…。
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オリジナルな作品になると確信した
Q:お2人は本作で初共演ですね。
テイラー=ジョイ:マイルズとはかなり前から親しくしていたので、いつか共演したいと思っていました。本作の脚本を受け取って読んだ時、すでにマイルズにオファーが行っていることを聞いて、うれしくなったのを覚えています。彼と一緒にダンスする感じで映画作りを楽しめるんじゃないかと期待していたら、それが実現した感じです。
テラー:たしかに一緒に踊れたね(笑)。僕も同感。長い間おたがいを知っていたので、今回の作品は重要なものになると最初からわかっていました。僕がオファーを受けた時、概要はこんな感じでした。2人のメインキャラクターが任務に送られ、1年もの間、もう1人の相手や外の世界に一切接触せず、完全に孤立状態となる。2人ともスナイパーなので、スコープ(狙撃銃の望遠鏡)を通して恋におちていく……。つまり複数のジャンルが組み合わさった、オリジナルな作品になると確信していましたね。
テイラー=ジョイ:そう、まさにジャンルを特定できないのが本作の魅力です。3本の映画を1本にまとめた印象ですから。
Apple Original Films『深い谷の間に』画像提供 Apple
Q:具体的に作品のどんな部分がオリジナルなのでしょう。
テラー:これは過去にないほどユニークな作品です。
テイラー=ジョイ:まず映画を観る人が、この2人の主人公を“知る”楽しみがあるという点。そして観ながら彼らに夢中になり、ある種の災難に巻き込まれた時に応援したくなるはず。その時点で共闘する2人に、誰もが感情移入してしまうと確信できたのです。
テラー:完全に独創的なアイデアを、観る人に向けて早い段階でルールを理解させる。「映画の旅」に連れて行ってくれる作品になると思いました。主人公たちが最も幸せになりそうな時間から、地獄へ投げ込まれる急展開も用意されています。しかもその地獄を生き残ったとしても、何の価値も見出せません。それでも窮地を抜け出そうとする2人のキャラクターが僕は大好きで、そのあたりがオリジナルな感覚を呼び起こしたのかもしれません。
Q:つまり脚本を読んで、すぐに参加したいと思ったわけですね。
テイラー=ジョイ:私は『マッドマックス:フュリオサ』を撮影している時に読みました。そのせいか「次の作品でもアクションに挑戦できる!」と喜んだのです。おそらく人生で最高に肉体が動いていた時期だったのでしょう(笑)。準備万端で撮影に臨めるという自信がありました。
テラー:僕は脚本を読んで、演じるリーヴァイのことを考えて胸が張り裂けそうになったんです。リーヴァイは人間として生きる喜びをまったく感じてはおらず、その場とは異なる遠いところに存在するような人。そんな彼の人生に僕は“光”を取り戻させたかった。オファーを受けるうえでそこが背中を押された部分です。