本年度アカデミー賞で最多12部門13ノミネートを果たした『エミリア・ペレス』。これは“非英語映画”として歴代最多ノミネートの快挙である。手掛けたのはフランスの名匠、ジャック・オーディアール監督。『ディーパンの闘い』(15)、『ゴールデン・リバー』(18)などで数々の映画賞に輝いたオーディアール監督が今回挑んだのは、サスペンス×アクション×ミュージカル×ヒューマンドラマと、ジャンルを超えた独創的な作品。オーディアール監督はいかにして『エミリア・ペレス』を作り上げたのか。横浜フランス映画祭で来日した監督に話を伺った。
『エミリア・ペレス』あらすじ
弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は、メキシコの麻薬カルテルのボス、マニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、イギリスで新たな人生を歩むリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリア・ペレス(カルラ・ソフィア・ガスコン)だった…。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみが交錯する中、彼女たちの人生が再び動き出す――。
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きっかけは偶然と感性
Q:これまで様々なジャンルの映画を作られてきましたが、いつもどのように着想されているのでしょうか。
オーディアール:どのような映画になるか、分からないまま作り始めることが多いですね。今回は、ボリス・ラゾンの「Ecoute」という小説をたまたま手に取ったことがきっかけです。自分だと思いつかないような設定が面白かった。この小説を手に取ったこと自体が偶然でしたし、もし10年前に読んでいたら何とも思わなかったかもしれない。自分の感性がそのとき「これは面白い!」と感じたからこそ映画化したいと思えた。そういった偶然や、そのときの感性が、映画作りのきっかけに影響しているかもしれません。
『エミリア・ペレス』 © 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA PHOTO:©Shanna Besson
Q:今回はミュージカルということで、作詞・作曲や振り付けなど専門スタッフとのコラボレーションが必須となります。自身のビジョンをどのように伝えたのでしょうか。
オーディアール:各スタッフとのコミュニケーションは同時進行ではなく、さまざまな段階でその都度進めていきました。まずシナリオをトマ・ビデガンと一緒に書き、そこに作詞作曲のスタッフが加わりました。曲がある程度完成すると、それを参考にさらにシナリオを膨らませました。その後、振付師のダミアン・ジャレに加わってもらい、ゾーイ・サルダナやセレーナ・ゴメスも交えて振り付けを作っていきました。多くの人が様々な形で加わってきて、徐々に作り上げていった感じです。
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