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『無名の人生』鈴木竜也監督 脚本を書かずに制作を開始、たった一人の長編アニメ制作【Director’s Interview Vol.489】

『無名の人生』鈴木竜也監督 脚本を書かずに制作を開始、たった一人の長編アニメ制作【Director’s Interview Vol.489】

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革命をもたらしたApple Pencil



Q:相当な枚数を描かれたと思いますが、一人で描くことを続けるのは大変だったのでは無いでしょうか。


鈴木:描いていなかったと言いつつも、画を描くこと自体は好きでした。特に落書きが大好きだったので、歌舞伎町のオイスターバーで働いていたときも、暇な時間は「オイスターくん」という牡蠣のキャラクターを描いたりしていました。だからアニメを始めたらもう、楽しくて楽しくて(笑)。制作においてつらい局面は一切無かったですね。


アニメを始めることを友人に相談すると、「Procreate」という600円くらい(当時)で買えるiPadのアプリを教えてくれました。買い切りのソフトだったので「600円で永遠に使えるぞ!」と(笑)。アニメーション機能もついていたので、それで動かしたりもしていました。


Q:本作を観た後に短編2本を観直すと、タッチが徐々に変わっていることがわかります。


鈴木:前の作品を見返すと、やっぱり下手だなと(笑)。今回はこれまでの作品と差別化したくて、使う道具をApple Pencilに変えたりしてみました。陰影もつけたりして表現方法は変わったと思いますが、『MAHOROBA』に似たモンタージュ感のある作品になったと思います。



『無名の人生』© 鈴木竜也


Q:Apple Pencilで描きやすさなども向上したのでしょうか。


鈴木:もう革命が起きましたね。それまでは100円ショップなどで売っているペン先が綿棒みたいなものを使っていて、カクつきまくっていたのですが、Apple Pencilはペン先を寝かせると線が太くできるし、操作性もとてもいい。「何で今まで使わなかったんだろう」と(笑)。


そうやってiPadの小さな画面で画を描いて、それをiMacの方に飛ばしFinal cut pro(以下、Final cut)でどんどん編集していきました。ただ、アフターエフェクト関連が全然わからないので、その辺は友人の富田くん(本作の撮影・特殊効果担当)にお願いしています。ズームやパンはFinal cut でできたのですが、富田くんにはリアルな感じで車を動かしてもらったり、ライブの照明などを作ってもらいました。僕はパソコンが本当に苦手なんです(笑)。


Q:Macを使いこなしているイメージがあります(笑)。


鈴木:ゲームをやっていてもコントローラーを投げるタイプなので(笑)、ちょっとでも数値関連が出てくるともう嫌になる。ギリギリのところで戦っていました。「Procreate」は初心者向けの仕様で操作が簡単だったのですが、今は「Illustrator」で苦しんでいます(笑)。


Q:「Procreate」では具体的にどこまでの作業をされていたのでしょうか。


鈴木:「Procreate」でキャラクターを描いてそれをPNGアニメで書き出し、Final cutで別途描いた背景とガッチャンコするのが基本の作業でした。そこから照明っぽいことをやりたくて、その細かい作業をFinal cutでやったのですが、そもそもやり方が合っていたのかどうか分からない。編集の終盤ではずっと虹色がクルクル*していましたね(笑)。


*Macでの情報処理中の状態


Q:虹色クルクルはちゃんと止まったのでしょうか。


鈴木:ちゃんと止まりました。「この間にたばこを1本吸おう」と、うまく付き合っていましたね。




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