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『無名の人生』鈴木竜也監督 脚本を書かずに制作を開始、たった一人の長編アニメ制作【Director’s Interview Vol.489】

『無名の人生』鈴木竜也監督 脚本を書かずに制作を開始、たった一人の長編アニメ制作【Director’s Interview Vol.489】

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リアルタイムで反映した社会問題



Q:作品では現代日本の暗部を扱うことが多いですが、学生時代に撮っていた実写も同じようなテーマだったのでしょうか。


鈴木:同じでした。カンニングで摘発された大学生がホームレスになっちゃう映画を作っていました。人の嫌なところを見つける能力には自信があるんです(笑)。


Q:渋谷の試写会場で本作を拝見しましたが、上映後に渋谷の街に出ると海外からの観光客で溢れている。彼らの多くは日本が天国だと感じていると思いますが、この映画では日本の地獄の部分が描かれている。その温度差を強く感じました。


鈴木:『MAHOROBA』のときもそうでしたが、天国と地獄みたいなことは常に考えているかもしれません。この人は天国行き、この人は地獄行き、とキャラクターを仕分けして描いている感覚があります。ヤクザ映画やマフィア映画、ブラックコメディみたいなものが元々好きで、それが自分の作風になっている自覚もあります。日本では少ないジャンルのような気もするので、「このままやったろ!」みたいな感じで続けています。


Q:日本で起こったタイムリーな社会問題も含まれていますが、制作期間に起こった出来事は都度取り入れていたのでしょうか。


鈴木:2023年の4月1日から制作を始めたのですが、アイドル事務所の性加害問題をBBCが放送したのが同年の3月7日あたり。この映画にはアイドルを出して輝かしく描こうと思っていたのですが、報道の件は避けて通れないと思い、映画に盛り込んでいきました。その後の報道を踏まえて内容が変わったところも多いですし、リアルタイムで影響を受けていましたね。


映画で描いたことが現実に起こったりしたこともあって、めっちゃビビっていますが(笑)、現実がこの映画に近づくだろうなという予感はありました。映画で描いた一対一の対談番組などは、今後人気が出てくるのではないかと。



『無名の人生』© 鈴木竜也


Q:ホストやトー横キッズ的なものも出てきますが、ご自身が歌舞伎町で働いていたことも影響しているのでしょうか。


鈴木:自分が知っている場所や好きなものを投影した方が、見たことのないアニメになる。歌舞伎町パートは6〜7分くらいに凝縮されていますが、本当はまだまだ描きたい。歌舞伎町のエグい部分をアニメで見せたいと思っていました。


僕の中でのホストのイメージは「城咲仁」みたいな感じでしたが、実際はK-POPアイドルみたいなメイクをした男の子が多くて、この映画で描いたようなタトゥーが入っている人も多い。ただ、僕のお店に来てくれていた人は、皆いい人だったので、映画では悪く描きすぎたかなとちょっと後悔しています。




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