
© 2024 Caesar Film LLC All Rights Reserved.
『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督 考えるべきは次世代の幸せ【Director’s Interview Vol.497】
妻・エレノアに捧げたもの
Q:エンドクレジットに「妻のエレノアに捧げる」と出てきますが、この言葉に込めた想いをお聞かせください。
コッポラ:彼女は62年連れ添った、私の最初で最後の妻でした。そして友人であり、私の子供たちの母でもあった。映画作家でありアーティストでもあったので、彼女と本作についてよく話しましたし、もちろん応援もしてくれていました。彼女は、私がリスクを顧みない人間だということをよくわかっていて、死ぬ間際に「あれをやれば良かった」ではなく、「あれをやっておいて良かった」と言えるように、人生を最大限にやりきるという信条もよく理解してくれていました。
私にはひ孫もいますが、本当に叶うのであれば良い世界を次世代に残してあげたい。今がひどい世の中になっているのであれば、自分たちが手を尽くして良い世界にしたい。自分たちの子供だけではなく、全ての子供たちにそうしてあげたい。子供たちの中には将来のクロサワや、エイゼンシュテイン、モーツァルトがいるかもしれない。その思いはいつも妻と共有していました。「妻に捧げる」という言葉の一端にはそんな思いも込めています。
『メガロポリス』© 2024 Caesar Film LLC All Rights Reserved.
Q:今回は初めてのSF作品ですが、これまでSFを撮ろうとしたことはあったのでしょうか。
コッポラ:SFというよりも、これはシネマでありアート。何か特定のジャンルのものだとは思っていません。強いて言えば、寓話でありファンタジーですね。そもそも寓話というものは、表向きの話以外に何か別の意味を持つ場合が多く、本作ではそこに私の願いが盛り込まれています。先ほどから言っている、「皆が一つの家族となって互いを助け合う」ことです。
寓話といえば、日本の皆さんは「極限の恐怖」についてよく知っているのではないでしょうか。多くのアーティストが、日本が体験した戦争の苦しみや恐怖を描いていますが、私の知りうる限り、平和を描いた最高の映画は『ビルマの竪琴』(56)です。本当に大切なことを描いた美しい映画ですね。