1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督 考えるべきは次世代の幸せ【Director’s Interview Vol.497】
『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督 考えるべきは次世代の幸せ【Director’s Interview Vol.497】

© 2024 Caesar Film LLC All Rights Reserved.

『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督 考えるべきは次世代の幸せ【Director’s Interview Vol.497】

PAGES


ゴッドファーザー』シリーズ(72〜90)、『地獄の黙示録』(79)など、映画史に数々の金字塔を打ち立ててきた巨匠、フランシス・フォード・コッポラ。御年86歳の現在*もその創作意欲は衰えることなく、構想40年、製作費1億2,000万ドルを自己調達して作り上げた超大作『メガロポリス』がいよいよ公開される。それほどまでの時間と予算をかけてでも、巨匠が描き、伝えたかったものとは何だったのか。


映画界の生ける伝説、フランシス・フォード・コッポラ監督への貴重なインタビュー、お楽しみ下さい。


*2025年6月現在



『メガロポリス』あらすじ

21世紀、アメリカ共和国の大都市ニューローマでは、享楽にふける富裕層と苦しい生活を強いられる貧困層の格差が社会問題化していた。市の都市計画局局長を務め、名門クラッスス一族の一員でもある天才建築家カエサル・カティリナは、新都市メガロポリスの開発を推進する。それは、人々が平等で幸せに暮らせる理想郷(ルビ:ユートピア)だった。だが、財政難の中で利権に固執する市長のフランクリン・キケロは、カジノ建設を計画し、カエサルと真正面から対立する。また一族の後継を目論むクローディオ・プルケルの策謀にも巻き込まれ、カエサルは絶体絶命の危機に直面するが─。


Index


考えるべきは次世代の幸せ



Q:古代と未来を重ねることで、“今”を創造しているようでしたが、本作の世界観はどこから着想されたのでしょうか。


コッポラ:これまでに多くのローマ叙事詩を見てきました。映画では『スパルタカス』(60)や『ベン・ハー』(59)等がありましたが、自分だったらどう撮るだろうかと。そこで私は、自分の国であるアメリカを舞台に選んだわけです。アメリカは王制ではなくて共和制、ローマの法律を取り入れてそれを土台にして上院議会などを築いている。そこに現代としてのローマという設定を取り入れるのはどうだろうか。古代ローマはカエサルがオクタウィアヌスに乗っ取られて共和制を失っていくのですが、同じことをアメリカを舞台に描いてみたい。今の政府が乗っ取られて王制が樹立されるかもしれないというところが、発想の原点でした。



『メガロポリス』© 2024 Caesar Film LLC All Rights Reserved.


Q:本作で描かれる「権力争い」「家族」などのテーマは、『ゴッドファーザー』等これまでの作品でも描かれてきました。このテーマに魅了される理由を教えてください。


コッポラ:人類は一つの家族である。私はそう信じています。ホモサピエンスは30万年ほど前からこの世界に存在していますが、それぞれの環境に応じて進化したため、国や地域によって文化や見た目が異なっている。言ってみれば、今ここにいる私たちはいとこ同士みたいなもので、ここまで進化することのできた天才の末裔だとも言えます。それなのにも関わらず、人間は不幸で残酷な行動を起こしてしまう生物。私は86歳で孫を持つ身ですが、本来ならば楽園のような地を将来の子供たちに残せるはずだったのに、それがこんな世の中になってしまった。


人間がこんな生物になってしまったのは、ここ1万年くらいのことだと思います。その前はもっと母性主義だったのではないでしょうか。ここでぜひ、権力の間違った使い方や環境破壊など、何が必要で何が不要なのかを考え直してほしい。次世代の子供たちの幸せを考えることができれば、幸せな世の中を築けるはず。そしてそれを次世代に残せることができるはずなのです。


人類の歴史のうち知られている部分はほんの僅かです。記述を辿れるのがせいぜい1万年だとすると、30万年の歴史のうち29万年は知られていないことになる。1万年前に人間と馬との関係性が生まれ(馬がいなかったら『七人の侍』も撮れなかったかもしれませんね)、そしてその後、氷河期等の過酷な時代を生き抜いてこれたのは、人間はお互いに助け合ったから。この友情が、この世界を生きる学びだったわけです。そういった時代に戻り、皆が友人で家族であるという意識を持ち、殺し合いではなく生き抜くために何ができるかを考える必要があるのです。


第一次世界大戦前はパスポートやビザという概念が存在せず、どこへでも自由に行けたそうです。パスポートを発明したのはオーストリアで、ドイツ人が国内でスパイ活動をすることを恐れて生まれたものだとか。今は国が分かれていますが、私の夢は文化や音楽、芸術、職業などを維持した上で、国境をなくして一つの家族になること。どこでも好きなところへ行ける一つの地球。そもそも地球自体が私たちの家なのですから。


「権力争い」で言うと、ギリシャ悲劇から学ぶことも多くあります。ギリシャ悲劇では自分の兄弟の子供を殺すといった話がよく出てきますが、その子供を殺せば結局は敵を生むことになる。互いの子供を殺し合うのではなく、守り合うべき。それを私は伝えたいですね。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『メガロポリス』フランシス・フォード・コッポラ監督 考えるべきは次世代の幸せ【Director’s Interview Vol.497】