1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『次元を超える』豊田利晃監督 プロデューサーと監督を兼任、作り上げたのは念願のSF映画【Director’s Interview Vol.524】
『次元を超える』豊田利晃監督 プロデューサーと監督を兼任、作り上げたのは念願のSF映画【Director’s Interview Vol.524】

『次元を超える』豊田利晃監督 プロデューサーと監督を兼任、作り上げたのは念願のSF映画【Director’s Interview Vol.524】

PAGES


プロデューサーと監督の両立はやるもんじゃない



Q:本作は、『狼煙が呼ぶ』(19)『破壊の日』(20)、『全員切腹』(21)、『生きている。』(22)、『ここにいる。』(23)、『すぐにゆく。』(24)の狼蘇山(おおかみよみがえりやま)シリーズの集大成ということですが、今回でシリーズ完結ということでしょうか。


豊田:シリーズものと言っても一話ずつが全然違う話。そこは手塚治虫に影響されていて、「火の鳥」のように全体が出来上がったときに一つに見えるものを目指していました。ただ、こればっかりやっていると他の映画が撮れない(笑)。ここで一度終わらせたいなと。何年後かにやりたくなったら、またやればいいかなと。


『狼煙が呼ぶ』からの短編は、自分でプロデューサーをやり、自分のお金やクラウドファンディング、いろんな人たちからの出資で撮ってきました。それが長編となると結構なお金が掛かってくる。製作費1億円集めるって相当大変なんです。ただ、僕も56歳なので、借金背負ってでもいいから体が動くうちに大勝負かけようかなと。長編映画としては7年ぶりですね。「長編を観たい」という声もあったので頑張りました。これで回収できるかなぁ...。やべぇ...。みたいな感じになってますよ(笑)。



『次元を超える』©次元超越体/DIMENSIONS


Q:プロデューサーと監督の両方をやりながらの映画作りはいかがでしたか。


豊田:まぁ、やるもんじゃないですね(笑)。お金集めはいろんな人が協力してくれて、それこそ窪塚くんもいろんな人を紹介してくれました。集めたお金で撮影を始めたものの、前半を撮ったら後半の資金が無くなってしまった。振り込まれるはずのお金が振り込まれないなど、トラブルも重なり、撮影が延期になったんです。ちょっと諦めかけてたんですけど、偶然にも出資者が現れた。そこから全国を飛び回って、いろんな人に会いに行きました。不動産や建設会社の社長など、みんなポケットマネーで大金を出してくれました。そのお金を管理しつつ撮影を再開したんです。


映画の撮影って1日300万円くらいかかると言われていて、1日撮影を伸ばすと300万円が自分にのしかかってくる。「ここはクレーンで撮りたい」と思っても、クレーンを入れると150万~200万円くらいのお金がかかる。監督だけやっていた時は、プロデューサーが何と言おうと「ここは絶対クレーンで」とか、「ここは絶対ワンカットで」とか言っていたのですが、それが出来なくなってしまった。また、最初の脚本には乱闘シーンも書いてあって、もうちょっと予算があれば撮れたのですが、そういったものも自分で切らざるを得ない。監督とプロデューサー両方なんて、やるもんじゃないですね。


ただし、誰にも文句を言われない。「この役者を使え」とか言われないし、普通はできないことをできる良さがある。まぁでも、いざ現場に入ると100人ぐらいスタッフがいるので、いろんなことが起こってくるんですよ。日数が足りないとか、ジュニアの時間が1.5日しかないとかね(笑)。そういったいろんな条件がある中で、「よし、わかった!」と何とか切り抜けていきました。


Q:監督だけやっていたときは、その辺は自分の範囲じゃないですよね。


豊田:そう。だからご飯の質とかも気になってくるわけです。弁当ばかりは絶対に嫌だから、ケータリングを入れようとかね。最近は栃木で撮ることが多いのですが、ケータリングが半端なく強い。地元のお母さんたちがご飯を作ってくれるんです。だから「食」だけは完璧(笑)。大作映画の現場でも冷たい弁当を食べる日々が続くと聞きます。スタッフたちは重労働なんでね、そういうのはやめたいなとずっと思っていました。今回の初日なんか、差し入れで代官山の寿司が出ましたから。びっくりしました(笑)。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『次元を超える』豊田利晃監督 プロデューサーと監督を兼任、作り上げたのは念願のSF映画【Director’s Interview Vol.524】