長期間のリハーサルがもたらすもの
Q:おふたりはいつも、撮影を始める前に俳優たちと長期間リハーサルを行うそうですが、今回はどのくらいリハーサル期間を設けたのでしょうか。
ジャン=ピエール:リハーサル期間は5週間ほどでした。実際のセットにビデオカメラを入れ、俳優たちと一緒に繰り返しリハーサルを行いました。これまでの作品との大きな違いは、リハーサルの場に赤ん坊がいたことです。最初の4週間、母親役の俳優たちは人形を使って演技をしていましたが、最後の週には、本物の赤ん坊と一緒に演技をしてもらいました。すると誰も予期しなかったことが起こりました。実際の赤ん坊を相手にしたことで、俳優たちの演技が完全に変わり始めたのです。
赤ん坊たちにはもちろん演技をしているという感覚はありません。ただそこに存在しているだけです。ですから母親役の俳優たちは、赤ん坊を抱っこしながら、自分の動作がこの子たちを危険に晒さないか、泣き出したらどうしようと、常に気にかけなければいけませんでした。役を演じることと、目の前の子供に注意を向けること、この二つを同時に行うことが俳優たちに義務付けられたのです。
結果的に、実際の赤ん坊を抱きながらする彼女たちの演技は、それまでに見てきた演技とは全く別のものとなりました。これは赤ん坊がもたらした素晴らしい効果でした。

『そして彼女たちは』ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus
Q:おふたりの映画を観ていると、まるで実際に起きた出来事を撮影したドキュメンタリーを観ているような気持ちになります。けれどお話を聞いていると、物語の作り方から俳優の動かし方、カメラの動きまで、時間をかけて緻密に準備され、フィクションが構築されていることがよくわかります。ご自分たちの映画が「ドキュメンタリー的だ」と評されることについて、どのように感じていらっしゃいますか。
ジャン=ピエール:ジャンルもそうですし、シナリオや演出の面でも、いわゆるスペクタクル的な要素が少ないからかもしれません。それと、私たちの映画の登場人物たちはただ映画のためだけに存在する人たちではありません。カメラが回る前からそこにいて、カメラのスイッチを切った後もまだ存在している、そういう人たちです。観客は、こうした人々と一緒にある一瞬を過ごし、まるで彼らと共にその場にいるように感じるわけです。私たちがしばしば使う長回しという撮影手法が、そのような臨場感を感じさせるのだともいえます。
リュック:カメラの位置も大きいですね。私たちはいろんな場所にカメラを置き、人々のすぐ近くから手持ちで撮ったりもする。そうした撮り方が、普通のスペクタクル的な演出をする映画とは何か違うようだ、と観客に感じさせるのでしょう。