昭和と平成が交錯するような独特のノスタルジーを纏い、子供から大人に至るまでの日常の機微を鮮烈に描き出した映画『我々は宇宙人』。全編手描きの質感はもちろん、物語の展開まで全てが驚きに満ち溢れている。アヌシー国際アニメーション映画祭やカンヌ国際映画祭など、海外での高い評価も納得のクオリティだ。
約5年の歳月をかけ、監督を含めた5人だけでほぼ全ての絵を描きあげたという本作。門脇監督はいかにして『我々は宇宙人』を作り上げたのか。話を伺った。
『我々は宇宙人』あらすじ
平成のある田舎町。内気で“普通“であることに悩む少年・翼は、小学三年生の春、クラスの人気者で“特別“な存在の暁太郎と出会い、親友になる。二人だけの遊び、意味のない会話、夕暮れの帰り道------世界は確かに、彼らのものだった。しかしある日を境に、暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり、噂や視線が彼を囲んでいく。やがて起こる、取り返しのつかない事件。「もしもさ、俺が宇宙人だったらどうする?」 これは二人の青春物語なのか、それとも消したい記憶なのか。30年にわたる友情を描いた、かぎりなく青い旅立ちの物語------。
Index
最初にあったのは「世界観」
Q:多くの大人が共感しうる子供時代が描かれますが、どのように着想されたのでしょうか。
門脇:「自分があの時、この選択をしていたら、こうなっただろう」という原体験をベースにしています。また、そこから派生して「自分はこちらを選んだけれど、もしかしたらあっちに行っていたかもしれない」と想像を膨らませて描いた部分もあります。つまり、実際にあった自分の原体験をベースにしつつ「もしも〜」と考えたものをミックスして描きました。
Q:翼と暁太郎が子供時代に経験した出来事は、多くの人にも似たような経験があるように感じました。映画を観て、「自分も翼のようになっていたかもしれない」と感じる人は少なくないのではと思います。
門脇:自分自身もきっと、相手から指摘されても覚えていないことが多々あると思います。何十年も経って子供時代の友だちと再会したときに、「実はこういうことを覚えていて…」と言われることがある。人生を長く過ごしていると、そういった記憶を回収できたりしますよね。すごく小さなことなんですが、自分も、自分だけ10円ガムが配られなかったことをいまだに覚えていたりして(笑)。今回はそういう話にしたいと思いました。

『我々は宇宙人』©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS
Q:テーマ、物語、表現とどれも個性的ですが、どこから先に考えましたか。
門脇:この作品で最初にあったのは「世界観」です。平成の懐かしい風情が漂っていて、2階建ての低い住宅街みたいなものがどこまでも無限に広がっている。そんな架空の世界で、小学生たちのストーリーを見てみたかった。今まで生きてきた中で、好きだった景色や過ごしていた場所をパッチワークし、オリジナルの世界観を作り出しました。
Q:昭和の雰囲気が残っているところも年代を超えて刺さったように思います。平成を描きつつも、多くの世代に共通する普遍的なものにすることは意識されていたのでしょうか。
門脇:それは意識していました。1枚の絵だけを見て、昭和か平成か明らかに分かるような演出は無意識に避けていたかもしれません。宣伝ポスターも、昭和と平成どちらにもとれる感じにして、幅広い世代に向けて作っています。
Q:予告編の印象から、想像の斜め上をいく展開に驚きました。物語の全体構成は最初から思い描いていたのでしょうか。
門脇:そうですね。ラストのラストまでは決まっていなかったのですが、全体の起承転結は企画書の段階では見えていました。