タイトルの位置に込められた意味
Q:本作のタイトル『京都ALS患者嘱託殺人事件』は、映画が始まってかなり経ってから、唐突に出てきます。あの位置は珍しいですね。そこまでは前提を描き、ここから事件の本題に入る、観客に「そうだ、これは事件の話だった」と思い出させる意図を感じました。
二村:そうなんです。あそこで「殺人事件」という言葉がポンッと出るところにインパクトがあって、「あ、そうか」と思い出す効果もあります。
Q:林さんが苦しみから逃れようとしても、その行き着く先が犯罪として裁かれてしまう。あそこでタイトルを見せることで、その現実を改めて印象づけているようにも感じました。
二村:実は元々は違うタイトルだったんですが、配給の東風さんからアドバイスをいただいて、事件の名前を冠することになりました。

『京都ALS患者嘱託殺人事件』©『京都ALS患者嘱託殺人事件』製作委員会
Q:もともとは、どんなタイトルだったのですか。
二村:最初は「13」というタイトルでした。憲法13条を意味する数字です。13条は幸福追求権等が含まれていて、「国民は個人として尊重される」というものなんです。林さんの「安楽死させてほしい」という訴えは幸福追求の権利に含まれるのかどうかが、裁判で一つの争点になっていたんです。死ぬ権利というものが認められるのかどうか。あのような状況に陥った人が、苦しさを訴えているにも関わらず、生かし続けることは憲法13条に反するのではないかという主張だったんですよね。そこを考えるべきだと思ったので、「13」というタイトルをつけていました。
Q:配給会社の東風からは、どんな意見があったのでしょうか。
二村:「13」では何が描かれているのかイメージが浮かびづらく、観客に訴求するのが難しいのではと。
Q:事件名をそのまま冠した無機質にも見えるタイトルですが、あのタイミングで観客に提示されることが重要だと感じました。
二村:事件というものが2人をつなぐ鍵ですし、それしか逃げ道がなかったという象徴的な事件名かなと思います。