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『アリータ:バトル・エンジェル』サイバーパンク、戦うヒロイン。『銃夢』とキャメロンの親和性から生まれた ※注!ネタバレ含みます。

(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

『アリータ:バトル・エンジェル』サイバーパンク、戦うヒロイン。『銃夢』とキャメロンの親和性から生まれた ※注!ネタバレ含みます。

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※2019年3月記事掲載時の情報です。

※本記事は3ページ以降で物語の筋に触れており、特に4ページ目ではラストシーンに言及しています。映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『アリータ:バトル・エンジェル』あらすじ

舞台は、“支配する者”と“支配される者”の2つの世界に分断された、謎めいた遠い未来。サイバー医師のイドは、瓦礫の中から少女の人形の頭部を拾い上げる。彼女は300年前のサイボーグであり、なんと脳は生身のまま生きていた。イドは、過去の記憶を失っていた少女に新たな機械の身体を与え、アリータと名付けて成長を見守る。ある日、自分の中に並外れた戦闘能力が眠っていることに気づいたアリータは、自分が300年前に失われたテクノロジーで創られた“最強兵器”だということを知る。逃れられない運命に直面した少女は、与えられた自分の命の意味を見つけるために、二つの世界の秩序を揺るがす壮大な旅に出る。


Index


『銃夢』とジェームズ・キャメロンの運命的邂逅



 木城ゆきと作・画の『銃夢』は、未来のディストピア的世界を舞台にしたSF漫画だ。1990年から1995年にかけて集英社の『ビジネスジャンプ』で連載され、15の国・地域で翻訳版も出版された。そのこと自体は、日本の漫画とアニメが人気コンテンツとして世界に輸出される昨今では、さほど珍しいことではない。だが、『銃夢』だけに起きた特別な奇跡がある。それは、『アバター』(09)と『タイタニック』(97)で世界興行収入歴代1位、2位を今なお堅持する巨匠、ジェームズ・キャメロンが映画化権を獲得したことだ。


 きっかけは25年ほど前、のちに『パシフィック・リム』(13)で日本オタクぶりを炸裂させることになるギレルモ・デル・トロが、『銃夢』のオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)版を「君に合いそうだ」と言ってキャメロンに勧めたことだった。キャメロンはたちまち夢中になり、20世紀フォックスと共同で映画化の権利を獲得した。では一体、『銃夢』のどんな要素が、ハリウッド最大のヒットメーカーにして稀代のビジュアリストであるキャメロンを突き動かしたのか?



『アリータ:バトル・エンジェル』(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation


 筆頭に挙げられるのは、サイバーパンクSFの流れをくむその世界観だろう。身体の一部または大部分が機械化されたサイボーグが遍在する未来。人々の行動がコンピュータ、カメラ、治安ロボットによってモニターされる監視社会。さらに原作には、主人公が仮想世界に入ってバトルを繰り広げるエピソードもある。これらの要素に、『ターミネーター』(84)と『ターミネーター2』(91)、そして『エイリアン2』(86)で自ら脚本を書き監督したキャメロンは親近感を抱いたに違いない。


『エイリアン2』予告


 そしてもう1つ、〈戦うヒロイン〉の存在も重要だ。『エイリアン』(79)で原案・脚本のダン・オバノンとリドリー・スコット監督が創造したキャラクターであるリプリー(シガニー・ウィーバー)にもその萌芽が見られるが、エイリアンとの圧倒的な力の差ゆえに、正面切って闘うのではなく、追いつめられながらもとっさの機転でかろうじてサヴァイヴするという、どちらかと言えばホラー映画の文法に則った人物像だった。


 その続編の監督に起用されたキャメロンは、戦争アクションのスタイルをシリーズに導入、終盤のハイライトでは、リプリーがパワーローダーに乗り込みエイリアン・クイーンと対決する印象的な場面を創り上げる。さらに、『ターミネーター2』のサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)によって〈戦うヒロイン〉のキャラクター造形を進化させた。そんなキャメロンだからこそ、“戦う天使”アリータに魅了され、自らの手で映像化したいと望んだのだろう。



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