1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ゾンビランド:ダブルタップ
  4. 『ゾンビランド:ダブルタップ』10年経っても「変わらない」安心感――幸せがあふれる99分の“再会”
『ゾンビランド:ダブルタップ』10年経っても「変わらない」安心感――幸せがあふれる99分の“再会”

『ゾンビランド:ダブルタップ』10年経っても「変わらない」安心感――幸せがあふれる99分の“再会”


終末世界での「日常」をきっちりと描写



 新しいことをやるのか、フォーマットを揃えるのか。往々にして続編は前者を選択しがちだが、『ゾンビランド』は後者だ。


 例えば前作であればビル・マーレイ(本人役)と一緒に『ゴーストバスターズ』ごっこを繰り広げるシーンが話題となったが、本作ではそれに代わるシーンとしてタラハシーがエルヴィス・プレスリーごっこをするというシーンがある。また、コロンバスとタラハシーのそっくりさんが現れるというセルフ・パロディ的な“お遊び”も登場。前作の見せ場にあった遊園地でのバトルは、人間たちのコミュニティを舞台にした決戦に変わっている。自分たちの元を去った仲間を迎えに行くというストーリーも、前作と同じだ。


 ジェームズ・キャメロン監督が『ターミネーター2』で『ターミネーター』(84)の構造をマイナーチェンジさせて、「見やすさ」「安心感」「前作の振り返り」を物語の進行と同時並行で見せたように、『ゾンビランド:ダブルタップ』もまた、敢えて前作と展開を揃えることで、新要素が見えやすい作りにすると同時に、ファンにとっては「懐かしさ」がこみ上げるような流れを生み出している。



 『ターミネーター』は7年ぶりであり、『ゾンビランド』は10年ぶり。それなりに時間が空いてしまった続編を描くうえで、この手法は非常に有効だ。もちろん「焼き直し」になる危険性は常に付きまとうが、新しいことばかりを選ぶアプローチが、ファンにとって正解であるかというのは、一概には言えない。そもそも皆が期待するのは第一に「彼らにまた会える」ことであり、あの世界をまた観られることだ。『ゾンビランド』のチームは、その感覚を非常に大切にしているように思える。アカデミー賞を獲ろうが、ビッグバジェットの作品を撮ろうが、私たちは何ら変わらない――そんな力強い意志さえ、感じられる。


 現に、キャスト陣の演技は、あのメンバーがそのまま10年分歳を取ったら、という説得力を存分に含んだものとなっており、相変わらず早口でオタク気質が抜けず、カッコつけきれないコロンバスや、10年経っても素直になれないウィチタ、まだまだテンションが高いタラハシーなど、空白期間を埋めて余りある自然なものとなっている。オスカー女優にもかかわらず、前作以上に弾けた演技を見せてくれるエマも天晴れ。観る者にとっても、終始安心感を抱けるだろう。


 この中で外見的にも内面的にも最も変化を遂げているのはリトルロックだが、だからこそ「慣れ」を嫌がり、彼女が物語を動かす原動力になるという設定は、実に見事だ。物心ついたときから“ゾンビ世代”だったリトルロックにとっては、それ以前の世界を知っている3人との距離が埋まることはない。それ故に、「自分探し」は避けられないのだ。




 ここで注目したいのは、本シリーズがあくまで「日常」を描いているということ。「この世界で、楽しく生きていく」がモットーの映画であり、ゾンビが跋扈する世界のためぶっ飛んだものに思えがちだが、作品の主軸は日常ドラマであり、こんな極限状況でも楽観的に生きる美しさ。さらにいえば、どんな場所でも人間らしく生きていくことこそが、この作品の隠れた長所といえる。


 そのため、「こんな世界でも恋がしたい」と思うリトルロックの孤独感も、「こんな世界だから結婚したい」と思うコロンバスの願いも、「こんな世界だから幸せになれない」というウィチタの想いも、全てを自然に受け取ることができる。彼らの思考回路も感情の機微も、我々と同じ。舞台がゾンビ社会であるだけで、心は歪まず曲がらず、健全なままだ。


 人間の「心」をしっかりと描くこと。そのうえで悲観的にせず、笑って楽しめる方向を目指すこと。『ゾンビランド:ダブルタップ』は、前作で「家族」となった者たちのその後を描く、正真正銘の「正しい」続編といえるだろう。この「変わらなさ」は、それだけ登場人物たちが健康に年齢を重ねたことの証明でもある。過酷なサバイバル生活の中で、それがどれだけ難しいことか。ではなぜ上手くいったかといえば、信頼のおける「家族」が隣にいたからこそなのだ――。




 全員が力をつけて戻ってきたにもかかわらず、演出も演技も物語も、驚くほどに作品を“優先”している。この10年の間に、脚本チームは10本以上の案を書いては捨て、を繰り返したとか。10分も観れば、皆の献身性に心を動かされるに違いない。


 結局、スタッフ・キャストが皆この『ゾンビランド』のファンなのだろう。そうとしか思えないほど画面から滲み出している愛が、本作を特別な、それでいて期待通りの「続編」にしている。なんとも幸せな99分の“再会”を、劇場でかみしめていただきたい。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema



今すぐ観る


作品情報を見る



『ゾンビランド:ダブルタップ』

2019年11月22日(金)<ゾンビ深まる季節に>全国ロードショー

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


※2019年11月記事掲載時の情報です。

PAGES

この記事をシェア

公式SNSをフォロー

  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ゾンビランド:ダブルタップ
  4. 『ゾンビランド:ダブルタップ』10年経っても「変わらない」安心感――幸せがあふれる99分の“再会”