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尊敬する指導者『マルコムX』を描くため、スパイク・リーが引き寄せた運命

(c)Photofest / Getty Images

尊敬する指導者『マルコムX』を描くため、スパイク・リーが引き寄せた運命

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マルコムXと映画化への長い道



 公開前からブームを巻き起こすほどだった、マルコムXとは一体どんな人物なのか?


 1925年、マルコムXはネブラスカ州オマハにてマルコム・リトルとして誕生した。キリスト教バプティストの牧師だった父は、白人至上主義団体クー・クラックス・クランに嫌がらせを受け、マルコムが6歳の頃に亡くなった(死亡届は事故だが、殺された可能性が高い)。母はそれによって精神的にダメージを受け、マルコムはティーンの頃から非行に走るようになる。その末に、刑務所暮らしをするようになり、そこで出会ったのが「ネイション・オブ・イスラム教団」――ブラック・ムスリムという、イスラム教団体だった。出所後には教団の地域リーダーとして、ニューヨークで頭角を表していくが、大きくなった教団内での確執により暗殺され、39歳という短い生涯を閉じた。


 スパイク・リーはそんなマルコムXの人生を、6歳の頃から亡くなるまでをじっくりと丁寧に描いている。そのため、本作は3時間22分もある大作である。スパイク・リーは、本作で初めてワーナー・ブラザーズとともに製作したのだが、揉めることが多かった。3時間を超えることにワーナー側は難色を示したが、スパイク・リーは「『ゴッドファーザーPART II』(74)も、3時間20分だったけれど、ヒットしたので大丈夫」と、半ば無理矢理に納得させて意志を貫いている。そもそも、本作の製作が発表されてからというもの、ワーナーとスパイク・リーはずっと一発触発状態だった。



TM,(R) & Copyright (C) 2004 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 マルコムXの自伝を学生時代に読んだスパイク・リーは、この作品を絶対に自分の手で映画化させたかった。まさに、スパイク・リーにとってのドリーム・プロジェクトだったのだ。実は、マルコムXの映画化プロジェクトは、スパイク・リーが映画監督になる遥か前から存在し、一時期はアメリカ文学の第一人者ジェイムズ・ボールドウィンが脚本を執筆していたこともあった。ジェームズ・ボールドウィンとマルコムXは個人的に仲が良かったのだが、ネイション・オブ・イスラム教団とマルコムXの対立の関係上、自由に書くことができず映画化の話が座礁したと言われている。


 その頃から、映画化権を持っていたのが、本作のプロデューサーの1人であるマーヴィン・ワースだ。アカデミー賞ドキュメンタリー作品賞にノミネートしている『ドキュメンタリー マルコムX』(72)も、マーヴィン・ワースの製作である。マーヴィン・ワースが、ワーナー・ブラザーズにマルコムX自伝の映画化の話を持ちこんだことで、映画化の話が始まっていた。


 80年代初頭、マルコムXを描いた舞台『When The Chickens Come Home To Roost』にてマルコムXを演じ好評で話題になっていたのがデンゼル・ワシントンだった。その流れもあり、デンゼル・ワシントンがマルコムX役にキャスティングされ、デンゼル・ワシントンと『ソルジャー・ストーリー』(84)にて組んだノーマン・ジュイソンが監督候補にあがっていた。



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 それを聞いたスパイク・リーは激怒した。「マルコムX映画化は黒人監督が担当すべきだ。戯曲家オーガスト・ウィルソンは、自身の作品「フェンス』*1を映画化するなら黒人監督にしか許可しないと常々言っていた。それと理由は同じだ。白人監督にマルコムXは正確に描ける訳がない」


 『ソルジャー・ストーリー』のノーマン・ジュイソンならば、マルコムXも上手く描いてくれただろうと私は思うが、スパイク・リーはとにかく自分の手でマルコムXを描きたいという気持ちが強く、ノーマン・ジュイソンは自らスパイク・リーに監督の座を譲った。だがそれは、スパイク・リーとワーナーの対立の始まりだった。


*1 オーガスト・ウィルソンの『フェンス』(16)の映画化で監督を担当したのが、デンゼル・ワシントンである。アカデミー賞の作品賞と主演男優賞にノミネートされ、ヴィオラ・デイヴィスが助演女優賞を獲得した。



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