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『エクソシスト』信仰を失った神父が、“神”を取り戻すまでの物語
「下」から「上」へ…「カラス神父の上昇」
「なぜあんないい娘が選ばれた?」
「我々を絶望させるためだ。自分がまるで獣のようで心が醜く、神の愛に値しないと思わせてな。」
悪魔祓いのつかの間、メリン神父とカラス神父はこんな会話を交わす。信仰の危機を迎えているカラスにとって、神の愛に値しないのは自分の方だ、と思ったことだろう。
合理主義者の彼は、信仰を再び取り戻すために大きな賭けにでる。パズスを自らの体内に誘い込むことによって、悪霊の存在を実証する臨床試験だ。この世に悪魔がいるならば、その対の存在である神もいるはず。自分の命をかけた実験によって彼は神の存在をはっきりと感じ、“神の僕”として天に召されていく。
『エクソシスト』(c)2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
よくよく注目してみると、カラスは常に画面の「下」から「上」に上昇している。地下鉄の階段を上り、年老いた実母が住むアパートの階段を上り、悪魔が取り憑いたマクニール邸の階段を上る。最後に彼の身体は「上」から「下」に落下するが、彼の魂は最後に天に召されて「下」から「上」に上昇していくのだ。フリードキンは、カラスの魂の救済を映像的モチーフとして描いている。
映画のラストシーン近く、クリスはカラスの遺品のメダルをダイアー神父に渡す。それは聖ヨセフのメダルで、メリンがイラクで発掘したものと同じものだ。カラス神父の信仰の魂、悪に打ち勝った善なる魂は、このメダルに象徴されている。
かつて「信仰さえ消えた」と告白した男は、遂に自分の中の“神”を取り戻したのだ。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
『エクソシスト』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVDディレクターズカット版 ¥1,429 +税
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