2019.12.16
人物描写を主軸にした「自然な」つなげ方
では、改めて『ジュマンジ/ネクスト・レベル』のストーリーと座組みを振り返ろう。監督・脚本・出演陣は前回と同じで、『オーシャンズ8』(18)、『クレイジー・リッチ!』(18)、A24製作の『フェアウェル』(19)と乗りに乗っているオークワフィナ、『リーサル・ウェポン』シリーズのダニー・グローバー、『ツインズ』(88)、『バットマン リターンズ』(92)のダニー・デビートといった映画好きがニヤッとしてしまう演技派が新たに参加した。
ロック様ことドウェイン・ジョンソンとジャック・ブラックは言わずもがな、カレン・ギランは『アベンジャーズ』シリーズ、ケヴィン・ハートは著名コメディアン、ニック・ジョナスは人気ミュージシャン。若手キャストも、アレックス・ウルフは『へレディタリー/継承』(18)で抜群の演技力を見せた。キャストの並びを見れば、本作が“ガチ”であることがわかるだろう。
ストーリーに関しても、「どうやってまたゲームの世界に戻すのか」が非常によく練られている。前作『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』の隠れた素晴らしさは「この世界に居場所を見つけられない高校生が、ゲーム内で生きがいを見出す」設定を盛り込み、“陰キャ”の心情描写を丁寧に行った部分にあるが、本作もまた設定にキャラクターをはめ込むのではなく、キャラクターからストーリーを組み立てていくため無理やり感がない。
前作でゲームをクリアし、無事に現実世界へ帰ってきた4人。彼らは親友となり、青春の日々を謳歌していたが、大学進学に伴いそれぞれが別の道へ。自撮りマニアだったベサニー(マディソン・アイスマン)はボランティアで世界を回り、引っ込み思案だったマーサ(モーガン・ターナー)は華麗に“大学デビュー”を果たした。フリッジ(サーダリウス・ブラウン)も大学で部活と学業に大忙し。ただその中で、スペンサー(ウルフ)だけが新たな一歩を踏み出せないでいた。
ニューヨークでの1人暮らしになじめず、アルバイトでは怒られてばかりで、恋人のマーサとは遠距離恋愛ですれ違いが生じ、冷却期間中……。里帰りをするも、またもや自分の存在価値を見失ってしまったスペンサーは、ゲーム内の無敵の存在ブレイブストーン(ジョンソン)に焦がれ、破壊したはずのゲームを修復してしまう……。
急速な変化についていけず、心が鬱鬱としてしまう経験は、誰にだって起こり得るものだ。その最たる例が「適応障害」であるし、スペンサーがゲームの世界に戻ろうとするロジックは、極めて自然といえる。「ゲームを破壊して捨てたはずが、自分でもわからないけど持って帰ってしまった」という説明も、前作で最後の最後まで現実世界に戻るか悩んでいたスペンサーの姿を見ていれば、納得がいく。つまりこの映画は、「成長しても根本的な性格は変わらない」という人間くさい真理の上に成り立っている。だからこそ、嘘くさくなく心に響くのだろう。
本作は心を病んだスペンサーを仲間たちが命懸けで救いに行く友情物語であり、距離が生まれてしまったスペンサーとマーサのラブストーリーであり、そしてまたスペンサーの祖父エディ(デビート)とマイロ(グローバー)の確執が氷解するヒューマンドラマでもある。
アクションを増やしたり映像をアップグレードさせたりといった要素は続編の鉄板の演出であり、本作も「ダチョウと砂漠でデス・レース」「ヒヒの群れと吊り橋で対峙」「雪山の城内&空中バトル」といった、前作にはなかった新たなステージとパワーアップしたアクションで存分に楽しませてくれる。しかしそれらがストーリー内で機能しているのは、人間をちゃんと描き込んでいるからに他ならない。