2019.12.16
嫌いになれない「愛らしさ」
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』が二番煎じに終わらないのは、人物の描き込みのほかに、もう1つ要因があるように思う。それは、「真面目で嫌みがない」部分だ。明るく楽しいおバカ映画のように見せかけてはいるが、中身は考え抜かれ、精緻に作られている。
まず、本作の進化点で言うと、さらなるキャラシャッフルが行われるところが大きい。ロック様演じるブレイブストーンは中身がエディになり、「おじいちゃん演技」で観る者を笑わせてくれる。「耳が遠い」「呑み込みが遅い」「頑固」といったマイナス面から、「向こう見ずで勇敢」「死を恐れない」といったプラスの部分まで。
このアイデアは「アバターの中身は誰でもいい」というこの作品の特性を生かしたものでありながらも、「老いをマイナスにとらえていたエディが、自己を肯定する」というドラマ部分も描いている。また、祖父母、親、子どもといった3世代の物語に拡大させている点も極めて重要だ。どの世代が観ても共感できるようにターゲットが拡大されているし、「ゲームは世代に関係なく楽しめる」というクリスマスシーズンの映画にふさわしいピースフルなメッセージも伝わる。
さらに、かつてはレストランの共同経営者だったエディとマイロの確執のドラマは、前作のスペンサーとフリッジの関係性の発展形だ。この意図的なオーバーラップは、観る者に前作のおさらいと本作での若者たちの成長を同時に意識させており、新キャラクターを描くだけでなく旧キャラクターの掘り下げも行っていて実に効率的。
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』は構造を分析すればするほど、1つの事象に複数のレイヤーが重ねられた機能的なデザインになっていることがわかる。それでいて、コメディ要素もちゃんとカバーしているから恐れ入る。
先ほど述べた「嫌みのなさ」だが、それはコメディ部分も然り、作品全体のトーンにも言える。『ジュマンジ』を踏襲した、90年代のハリウッド映画に顕著な明るいカラーや、「老人がやたらいいことを言う」「落ち込んでいるシーンで雨が降る」「敢えて“置き”に行くギャグ」「シーンの終わりに大抵ボケが入る」など、"あるある"の要素が満載。カット割りやスローモーションの演出も、当時の映画への愛が如実ににじみ出ている。
さらに、『ミッション:インポッシブル』(96)の潜入シーンや、「ゲーム・オブ・スローンズ」の世界観、そしてもちろん『ジュマンジ』とのリンクなど、他作品へのオマージュも多数含まれており、前作でも使用されたガンズ・アンド・ローゼズの「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」など、楽曲も気の利いたものが並ぶ。
それらが“ドヤ顔”で提示されていれば観客は引いてしまうものだが、しっかりした意図と遊び心が感じられるため、本作の愛らしさが一層増す効果につながっている。「観客を楽しませたい」という作り手としての矜持と、「映画作りが楽しい」という本音がダブルで描かれることによる幸福感。『ジュマンジ』シリーズはまだ「先」がありそうだが、きっと次回作も愛にあふれた作品に仕上がっていることだろう。
なんだかんだ言って、この世界が楽しい。
それが、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』『ジュマンジ/ネクスト・レベル』のキャラクター/観客双方の共通認識ではないだろうか。
文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』
2019年12月13日(金)日米同時公開!
◆公式サイト:http://jumanji.jp
◆公式Twitter:https://twitter.com/JumanjiJP
◆公式Facebook:https://www.facebook.com/JumanjiJP/ #ジュマンジ
※2019年12月記事掲載時の情報です。