2024.08.27
リークされた幻のシナリオ
40年以上に渡るスカイウォーカー・サーガを締めくくるにあたって、問題は山積みだった。エピソード8との整合性をどのようにとればいいのか。撮影前に60歳の若さで逝去した、レイア姫役キャリー・フィッシャーの穴を埋める必要もあった。しかも、時間は決して多く残されていない。
「僕たちがこの物語に必要だと感じることは、何なのか。すべての人を満足させるなんて不可能だと分かっている。でも自分たちに忠実でなければ、決してうまくいかないんだ」(*)
J・J・エイブラムスのコメントには、もはや何をやっても負け戦という悲壮感に溢れているが、同時に、それでも自分たちが信じる最高の映画を作って見せる、という気概にも満ちている。世界で最も続編が期待される映画のバトンを受け取った彼は、何がベストソリューション足り得るのか、必死にプランを張り巡らせたことだろう。ひょっとしたら、ルーク・スカイウォーカーが『新たなる希望』で換気ダクトにプロトン魚雷を撃ち込んだときよりも、彼のプレッシャーは大きかったかもしれない。
J・J・エイブラムスは苦心惨憺の末、ディズニーを納得させるシナリオを開発。コリン・トレヴォロウとデレク・コノリーが執筆したオリジナル脚本は結局採用されず、二人の名前は原案(Story by)という形でクレジットされるにとどまった。だが門外不出だったはずのシナリオは後日流出してしまい、その内容が暴露されてしまう(リークされた脚本はトレヴォロウ自身が本物だと認めている)。
当然ながらそのストーリーは、現行のバージョンとは大きく異なる。銀河系は、ファースト・オーダーによって征服されている。カイロ・レンは、ダース・ベイダーのマスクをかぶって完全なるシス卿へと覚醒し、ルークの亡霊と対決する。レイはその戦いに身を投じるが、返り討ちにあって命を落としてしまう。やがてカイロ・レンは力尽き、レイはレイアによって命を吹き返す。そしてラストは、『エピソード4/新たなる希望』と同じように、メダルの授与式で幕を下ろす。
幻のシナリオに冠されたタイトルは、「Duel Of The Fates(運命の闘い)」。ジョン・ウィリアムズが『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)のために書き下ろした曲の題名と同一だ。だが実際に運命の闘いに挑むことになったのは、レイ(デイジー・リドリー)でもフィン(ジョン・ボイエガ)でもなく、J・J・エイブラムスだった。
『スカイウォーカーの夜明け』とは、運命の戦いに挑んだ、J・J・エイブラムス最後の冒険なのである。