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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』運命の戦いに挑んだ、J・J・エイブラムス最後の冒険

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』運命の戦いに挑んだ、J・J・エイブラムス最後の冒険

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血統主義か、非血統主義か



 スカイウォーカー・サーガとして血統主義に立ち戻るのか、それとも非血統主義を引き継ぐのか。血統主義に戻せば『最後のジェダイ』の存在意義が雲散霧消してしまうし、非血統主義にすればこれまでの歴史が否定されてしまう。どちらに舵を切っても、熱狂的ファンから怒号が飛ぶことは必然だった。J・J・エイブラムスが下した結論は、血統主義と非血統主義を両立させて、双方のバランスに配慮したものだった。


 本作は、『スカイウォーカーの夜明け(The Rise Of Skywalker)』という、思いっきりスカイウォーカー家の血脈の物語に回帰したようなタイトルが冠されている。だがおそらくその意図は、スカイウォーカーの血を継ぐ者(=血統主義)と、スカイウォーカーの意思を継ぐ者(=非血統主義)を共闘させることで、新しい時代の到来(=夜明け)を提示することではないだろうか。


 スカイウォーカーの血を継ぐ者とは、もちろんカイロ・レン(アダム・ドライバー)だ。ハン・ソロの幻影に「カイロ・レンは死んだ。俺の息子は生きている」と語りかけられ、彼はジェダイとして蘇る。そして、スカイウォーカーの意思を継ぐ者=レイ。彼女はカイロ・レンとより深い絆を強め、悪の枢軸ファイナル・オーダーとの戦いに挑む。


 『スカイウォーカーの夜明け』最大の衝撃は、ダース・シディアスこと皇帝パルパティーンが存在していたことだろう。『ジェダイの帰還』でデス・スターの反応炉に突き落とされたはずなのに、オープニングクロールの一行目がまさかの「The dead speak!(死者の口が開いた!)」。予告編で彼の笑い声がインサートされていたり、スター・ウォーズ・セレブレーションでパルパティーン役のイアン・マクダーミドがサプライズ登場していたこともあって、なんとなく想像はついていたのだが、それにしてもまさかの展開である。


 しかもレイには、パルパティーンの血が息づいていた。復活した銀河皇帝の真の狙いは、孫であるレイを女帝パルパティーンとして迎え入れることだったのだ。だが彼女はシスへの誘惑を断ち切り、見事レジスタンスを勝利へと導く。そして彼女はBB-8と共に惑星タトゥイーンへと赴き、ラストカットで自分の名前はレイ・スカイウォーカーだと名乗る。自らの血に縛られない非血統主義が、強烈に刻印されている。


 一方のカイロ・レンは、パルパティーンとの戦いで力尽きたレイを最後の力を振り絞って蘇生させ、その引き換えに命を落とす。最後に二人が抱き合って唇を重ねるシーンは、公開当時批判の声も多く聞かれた。確かに筆者も、唐突なラブシーンには戸惑いを覚えたものだ。だがそれは、血統主義と非血統主義のミックスをロマンスとして表現したものであり、カイロ・レンが命を落としてしまうのは、「二人が結ばれて子供を宿し、新たなスカイウォーカー家の血を受け継ぐ者が生まれる」という、血統主義への傾倒を封印したゆえと考えれば、なんとなく合点はいく。あくまで、なんとなくですが。


 面白いデータがある。映画批評サイトのロッテントマトには、評論家による評価のトマトメーターと、観客による評価のオーディエンススコアの2つがあるのだが、シークエル・トリロジーに対する評価がバラバラなのだ。


『フォースの覚醒』

トマトメーター:93% オーディエンススコア:91%


『最後のジェダイ』

トマトメーター:91% オーディエンススコア:41%


『スカイウォーカーの夜明け』

トマトメーター:51% オーディエンススコア:86%

(2024年8月26日時点)


 評論家と観客の両方から高い評価を得ている『フォースの覚醒』に比べて、『最後のジェダイ』は観客のスコアが著しく低く、逆に『スカイウォーカーの夜明け』は評論家のスコアが著しく低い。おそらく最も批評的な視座をまとった『最後のジェダイ』を評論家は高く評価し、安易に観客におもねったような作りに見える『スカイウォーカーの夜明け』に否定的なジャッジを下したのだろう。


 正直な想いを告白すれば、筆者個人としてもこの作品に対していまだに複雑な感情を抱いている。あらゆることに目配せしすぎた結果、作品としてのまとまりがないように感じられるからだ。だが…おそらくどんな凄腕のフィルムメーカーが知恵を絞って創り上げたとしても、彼の言葉を借りるならば「すべての人を満足させるなんて不可能」だったことだろう。


 運命の戦いに挑んだ、J・J・エイブラムス最後の冒険は終わった。だが、『スター・ウォーズ』サーガはこれからも続いていく。我々の冒険も続いていく。願わくは、このシリーズを心から愛する全ての人たちに、フォースが共にあらんことを。


(*) https://screenrant.com/star-wars-rise-skywalker-jj-abrams-interview/



文: 竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。



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