2024.08.27
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』あらすじ
かつて銀河に君臨していた祖父ダース・ベイダーに傾倒し、その遺志を受け継ぐべく、銀河の圧倒的支配者へと上り詰めた、スカイウォーカー家の一人でもあるカイロ・レン。そして、伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの想いを引き継ぎ、類まれなフォースを覚醒させたレイ。新たなるサーガを担う若者二人の運命が、この物語の行く末を担っている。はるか彼方の銀河系で繰り広げられる、スカイウォーカー家を中心とした壮大な<サーガ>の結末は、“光と闇”のフォースをめぐる最終決戦に託された――。
Index
J・J・エイブラムスの再登板
伝説の復活。
ウォルト・ディズニー社がルーカスフィルムを40億5,000万ドルで買収し、新社長キャスリーン・ケネディのもとで『スター・ウォーズ』シークエル・トリロジーの企画が立ち上げられた瞬間から、このプロジェクトは映画史において最も困難な冒険のひとつとなった。世界中の映画ファンが待ち望んできたシリーズを、どのように再起動させるのか。あまりにも困難なミッションに選ばれたのは、才能溢れる実力派フィルムメーカーたちだった。
エピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)を手がけるのは、『SUPER8/スーパーエイト』(11)のJ・J・エイブラムス。エピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)は、『LOOPER/ルーパー』(12)のライアン・ジョンソン。そして最終章となるエピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)は、『ジュラシック・ワールド』(15)のコリン・トレヴォロウ。オリジナル・トリロジーが、ジョージ・ルーカス(『エピソード4/新たなる希望』77)、アーヴィン・カーシュナー(『エピソード5/帝国の逆襲』80)、リチャード・マーカンド(『エピソード6/ジェダイの帰還』83)と繋いでいったように、リレー形式でバトンが渡されていったのである。
だが、絶対的創造主たるジョージ・ルーカスを失った時点で、その方法はあまりにもハイリスクだった。マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギのように、全体のクリエイティブを統率できるキーパーソンは不在で、大枠のグランドデザインを描く者もいない。実は、J・J・エイブラムスはトリロジー全体の大まかなトリートメントも制作していたのだが、そんなものには誰も頓着しなかった。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』予告
J・J・エイブラムスとローレンス・カスダンが執筆したエピソード7のシナリオは、エピソード8担当のライアン・ジョンソンに共有され、彼の書いたシナリオは、エピソード9担当のコリン・トレヴォロウに共有される。世紀のプロジェクトは、監督たちが各々にストーリーを創り上げては数珠繋ぎされ、キャスリーン・ケネディのゴーサインが出ればそのまま撮影開始、というスタイルが採られた。良くいえば作家主義的だが、悪くいえば場当たり的。少なくとも三部作の整合性という意味において、それは悪い方向に出てしまった。
『フォースの覚醒』でJ・J・エイブラムスがとった戦略は、旧三部作のスピリットを正統に受け継ぐこと。『新たなる希望』をあからさまにリファレンスして、オールドファンが心ゆくまで楽しめる映画に仕上げてみせた。だがライアン・ジョンソンは、『最後のジェダイ』を偉大なシリーズのカウンターとして作ってしまう。スカイウォーカー家の血を引いた者のみが選ばれし者であるという“血統の物語”を断ち切り、誰しもがフォースを操ることができるという、新しい世界観を提示してみせたのだ。
エピソード7で提示したテーゼが、エピソード8ではアンチテーゼとしてひっくり返される。果たして、エピソード9はどんな方向に舵を切ればいいのか。しかも肝心のコリン・トレヴォロウが、“クリエイティブにおける意見の相違”を理由に監督を降板。カオスすぎる状況のなか、急遽J・J・エイブラムスがピンチヒッターとして監督に復帰することになる。
青天の霹靂。火中の栗を拾うとは、まさにこのこと。高らかにシークエル・トリロジーの幕を開けたJ・J・エイブラムスは、期せずしてその幕を下す役割をも担うことになったのである。