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『トラフィック』天才ソダバーグが贈る麻薬売買の全貌を暴いた傑作。複雑だが難解でない理由とは?

『トラフィック』天才ソダバーグが贈る麻薬売買の全貌を暴いた傑作。複雑だが難解でない理由とは?

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複雑な群像ドラマを3色に色分けした“コロンブスの卵”発想



 スティーブン・ソダーバーグがアカデミー監督賞に輝いた『トラフィック』(助演男優賞、脚色賞、編集賞も受賞)。アメリカとメキシコを舞台に、麻薬売買にまつわるさまざまな局面を、麻薬僕滅を目指す政治家、アメリカとメキシコの捜査官、麻薬に溺れる若者たち、麻薬戦争に怯える庶民、ドラッグビジネスに手を染める主婦など、ありとあらゆる立場の人々を通じて描いた壮大な群像劇だ。


 この映画の特徴は、膨大な登場人物によるシーンの断片がコラージュのように繋ぎ合わされていること。劇中でまったく交わることないキャラクターも多く、相互の人間関係を把握することすら困難に感じる人もいるだろう。


 しかし極論を言えば、誰が誰なのかを把握できなくても一向にかまわない。ソダーバーグが試みているのは、蜘蛛の巣のように複雑に絡み合った“ドラッグ問題”を、ミニマムな視点を積み重ねることで総体として浮かび上がらせることなのである。


 ただし「構成が複雑すぎて何が何やらさっぱりわからないよ!」と言われては元も子もない。そこでソダーバーグは、最低限の情報を交通整理するためにひとつの奇策を考え出した。


 本作は大まかに三つのパートに分けることができる。麻薬撲滅担当の政治家ウェイクフィールド(マイケル・ダグラス)とドラッグ中毒に陥るその娘キャロライン(エリカ・クリステンセン)のパート。麻薬密輸の仲介人だった夫が逮捕され、生きるために事業を引き継ぐ妻のヘレーナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)と、組織を追う捜査官コンビのゴードン(ドン・チードル)とカストロ(ルイス・ガスマン)のパート。そしてメキシコで清濁併せ呑みながらも麻薬捜査に参加する捜査官ハビエル(ベニチオ・デル・トロ)のパートだ。


 ソダーバーグは、この三つのパートを猛烈にわかりやすい方法で分別した。ズバリ“色分け”である。最初のパートは寒々しい青、二つ目のカリフォルニアパートは柔らかい暖色系、そして最後のメキシコパートはザラついた黄色。観客は、ひと目で大きい三つの物語軸を見分けることができる、という仕掛けだ。


 実はこの色分け、ソダーバーグは以前にも使ったことがある。1998年の犯罪映画『アウト・オブ・サイト』では異なる時制で三種類の囚人服が登場する。そこでソダーバーグは、観客が混乱にないようにとそれぞれの服を青、黄色、オレンジに色分けしたのだ。わざとか偶然は知らないが、暖色系、青、黄は『トラフィック』の色合わせとも同じだ。



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