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『レット・イット・ビー』ザ・ビートルズ終末期の光と影を図らずも焼きつけた哀愁のドキュメンタリー

(c)Photofest / Getty Images

『レット・イット・ビー』ザ・ビートルズ終末期の光と影を図らずも焼きつけた哀愁のドキュメンタリー

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明るく転じた2つの要因



 ジョージはメンバー全員に説得されて復帰する気になり、曲作りと収録が再開された。1月22日のことだ。


 その際、寒くて不評だったトゥイッケナムの撮影スタジオから、アップル社屋の地下に新設した録音スタジオに拠点を移すことになった。自分たちの会社のスタジオは居心地がよく、室内には暖炉まであった(ただし録音時はパチパチと燃える音が入ってしまうため、火を消さなければならなかったが)。映画本編では23分頃、ジョージの曲「フォー・ユー・ブルー」の間奏が流れるなか、次々に社屋に入っていく4人の姿が映る。


「フォー・ユー・ブルー」MV


 以降、アップルのスタジオで演奏するメンバーたちの表情は見違えて明るくなる。一因はもちろん、快適になった収録環境だろう。そしてもう一つの大きな理由は、エレクトリック・ピアノ奏者のビリー・プレストンがセッションに加わったことだ。楽曲を的確にサポートし引き立てる演奏が素晴らしいだけでなく、ビリーの明るい性格もバンド内の険悪な雰囲気を緩和する効果があった。


 くつろいだ表情でオールディーズのナンバーを何曲も続けてセッションする姿は、きっとデビュー前の十代はこんな感じで仲良く演奏を楽しんでいたのだろうなと思わせる。現在の不信感やいさかいをしばし忘れ、童心に返って懐かしい曲を歌い楽器を弾いている――そんな風に見て取れる。



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