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『ムーラン・ルージュ』の名匠バズ・ラーマンを支えた父の言葉と、インド映画から受けたインスピレーション

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ムーラン・ルージュ』の名匠バズ・ラーマンを支えた父の言葉と、インド映画から受けたインスピレーション

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一曲だけ製作されたオリジナル曲



 ちなみに本作では、一つだけオリジナルで勝負に出た曲があった。それが“Come What May”である。


 ラストに向けて徐々に形を帯びていくこの曲は「どんな運命が待ち受けようとも、君を愛し続ける」というような力強いメッセージを持つ。その仕上がりは上々。主役二人の名演も相まって、これらのシーンがもたらす感動は計り知れないものとなった。で、当然ながらファンはこの楽曲がアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされて当然と期待していたのだが、結果は・・・なんとノミネートならず。


「Come What Ma」


 これには理由がある。“Come What May”はもともとラーマンの前作『ロミオ&ジュリエット』(96)のために書かれ、未使用のまま終わった曲だったのだ。だからこそ作り手としてはこの自信曲を、満を持して『ムーラン・ルージュ』で披露したいという思いがあったのだろう。だがこれが結果的にアカデミー賞の規約に抵触した。よってオスカーでは作品賞をはじめ複数の候補入りを果たしながら、歌曲賞部門には全く引っかからなかったのである。


 でも面白いもので、いざこういう経緯を知って本編に臨むと、この曲の存在がかえって際立ち、本作の構成を改めてじっくりと味わうことが可能となる。


 劇場公開からおよそ20年。すでに何十回とご覧になっている人も、これが初めてという方も、ぜひこの曲に注目しながら豪華絢爛たる物語に身を浸してみてはいかがだろうか。きっとエンドロールの果てに掲げられる“This story is about TRUTH, BEAUTY, FREEDOM, But above all LOVE.”という言葉も、より深く、美しく胸に沁み入っていくはずだ。



参考URL

https://www.nytimes.com/2001/05/06/movies/film-think-bollywood-australia-and-paris-in-song.html

https://www.theguardian.com/film/2001/sep/07/1

https://www.goldenglobes.com/articles/2002-musical-or-comedy-moulin-rouge




文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『ムーラン・ルージュ』

ブルーレイ 発売中 ¥1,905+税

20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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