『サーホー』あらすじ
インドのはるか遠くにある暗黒帝国の犯罪都市ワージー。このきらびやかな大都市を裏で牛耳るのがロイ・グループのロイ(ジャッキー・シュロフ)だ。20年前、抗争に敗れたロイはボンベイ(現在のムンバイ)から、ワージーへ脱出し、首領プルドヴィラージの後継者になったのだ。ロイは金や石油の裏取引で組織を発展させたが、後継者争いに破れたプルドヴィラージの息子デーヴラージ(チャンキー・パーンデー)は面白くなかった。やがて、内部の対立が表面化すると、抗争を恐れたロイは裏社会から脱却し、ロイ・グループとして合法的な事業を展開した。そして、2016年からインド政府の優遇措置を受け、再生可能エネルギー及び水力発電事業を展開させる。しかし、その事業が動き出した矢先、ロイ会長は凱旋したムンバイで暗殺されてしまった。
その3週間後一。ムンバイ市警察は、被害総額3億ドル(約300億円)の謎の窃盗グループを追っていた。実行犯を全員逮捕したものの、逮捕者は、「見知らぬ者から指示を受けただけで、犯罪に加担していない」と自供する。実に謎めいた事件だった。そこで、市警幹部は現場に「今後の捜査は覆面捜査官に託した」と明かす。男の名前はアショーク(プラバース)。逞しくしなやかな肉体、そして、鋭い洞察力を持つタフガイ。大男たちをなぎ倒したと思えば、事件現場では犯行当時の犯人の動きを見事に言い当てる伝説の捜査官だ。
舞台は再びワージー。ロイ・グループの会議は後継者や今後の方針をめぐって紛糾していた。ロイの家族はかつての抗争で全員死んだと思われていたが、遠くの地で人知れず一人息子を育てていた。その息子ヴィシュワクが帰還したことで事態は大きく動く。ヴィシュワクは「資産2兆ルピー(約3兆5500万円)の在りかは私だけが知る」といい、金庫のカギとなるブラックボックスはムンバイにあると明かす。こうして、秘書のカルキ(マンディラ・ベーティー)はブラックボックスを手に入れるためムンバイへと赴く。一方、かねてから会長の座を狙っていたデーヴラージは、自分の手下たちにロイを殺害させ、2兆ルピーを奪ったと告白する。市警と合流したアショークは、美人捜査官アムリタ・ナイル(シュラッダー・カプール)を相棒にして、特命チームを指揮する。特命チームは窃盗グループを仕切る謎の男(ニール・ニティン・ムケーシュ)の姿を捉えていた。アショークはこの男との接触に成功。男は“ワージーにある金庫を開けるブラックボックスを入手してみせる”と豪語していた!市警がこのブラックボックスを手に入れれば、犯罪シンジケートのムンバイ進出を阻止できる。
こうして、ロイ・グループ、ムンバイ市警、謎の窃盗グループが入り乱れてのブラックボックス争奪戦が始まった。最後に、それを手にする者は誰か?
『バーフバリ』(15-17)連作の主演俳優プラバースの最新作『サーホー』(19)が日本公開となった。剣と盾を奮った『バーフバリ』とはうって変わって、舞台は銃弾の飛び交う近未来犯罪都市。そこで繰り広げられるギャングと警察、そして謎の男の三つ巴の戦いである。しかし、いくら舞台や時代背景が変わっても、観客のド肝を抜くダイナミックさは失われていない。
Index
予測不能! リピート必須なサスペンス・スリラー!
ドバイにスラム街を足したような近未来犯罪都市ワージー(もちろん架空)。街を牛耳るロイ・グループの総帥ロイは、裏稼業から手を引き公共事業への参画を始める。しかし、そんな矢先に総帥ロイは暗殺されてしまうのだった。加えて、それまで家族はいないとされていたロイに、一人息子のヴィシュワクが存在し、しかもロイには3兆円を超える資産があったことも明らかになる。
風雲急を告げるワージーは置いといて。インドのムンバイでは300億円の強奪事件が発生。複数人いる実行犯全員を捕まえるも、全員その場その場で多少気前のイイおこずかい程度の報酬で頼まれ事をしただけで、大それた犯罪はしていないと言う。この難事件にムンバイ市警は覆面捜査官アショーク(プラバース)に捜査を任せるという。
謎めいたアショークは、市警から派遣された美人捜査官アムリタ(シュラッダー・カプール)を始め周囲を困惑させるも、しかしメキメキと捜査を進展させ有力な容疑者[謎の男]をあぶり出すのであった。
と、ここまでで、まだタイトルも出ていない、ぜんぜん序盤である。
物語はハイスピードでショッキングな展開を繰り返し、裏切りとドンデン返しが128ビートで連打されていく。しかも、その折々でビシビシとキメポーズとキメゼリフが炸裂し、イカす高級スポーツカーが爆走し、ちょっとした捜査にマンション一棟まるごと巻き込んだ大アクションを展開していく。
真面目に物語を追っていては脳の処理能力はアッと言う間にイッパイイッパイになること間違いなし。1回の鑑賞では間に合わない、リピート必須の魅力に溢れた作品と言えるだろう。
最初の鑑賞では物語はスッパリ諦めて、眼前に現れる目眩く驚嘆の映像に集中し、まずはド肝を抜かれることをオススメする。