脚本にはそこまで書かれていなかった
ウィルソンによると、このシーンに関して、監督のノーラ・エフロンの脚本には『めぐり逢い』のクライマックスのディテールはそこまで詳細に綴られていなかったとか。しかし、本番でウィルソンは脚本を逸脱して即興で話し続け、結果的にそれが採用される。
『めぐり逢えたら』はハリウッドの古典的ラブロマンスにオマージュを捧げた作品だ。また、SNS全盛期の今見返すと、ラジオを介してアクセスした男女がアメリカを横断するストーリーは、物理的な意味で懐かしく感じることも確かである。時代は移ろえども、現実ではあり得ないロマンスに対する女性たちの愛着がいかに強いかを伝えるのが、エフロンの目的だった。ウィルソンの即興演技は映画の意図と見事マッチしていたと言うわけだ。
『めぐり逢えたら』(c)Photofest / Getty Images
この場面には、ベテラン・コメディエンヌ、リタ・ウィルソンの技が集約されているので、機会があれば是非チェックしてみて欲しい。因みに、サムとグレッグが『特攻大作戦』(67)でナチス司令部に潜入する12人の囚人による特攻部隊の人間模様を語り合いながら、やっぱり感極まるパートも、トム・ハンクスとヴィクター・ガーバーによる即興だとか。ハリウッドスターの適応力には舌を巻く。