稀代の俳優ポール・ニューマンの出世作
ポール・ニューマン(1925〜2008)といえば、私の世代では『カーズ』(06)で声の出演をしていた印象の方が強いのだが、言うまでもなく『明日に向って撃て!』(69)や『スティング』(73)をはじめ映画史を語るのに欠かせない伝説の名優である。ちなみにクリント・イーストウッドよりも5年早く生まれている。
NYのアクターズ・スタジオで研鑽を積み、ここで学んだマーロン・ブランドやジェームズ・ディーンとも比較される俳優だけに、この『ハスラー』でも、本能から導き出された一挙手一投足の演技が際立つ。何気ない仕草や表情の中にゾクゾクしたものがみなぎっているというべきだろうか。
『ハスラー』(c)Photofest / Getty Images
思えば、その83年にわたる人生は冒険の連続だった。自らの殻を破り、常に新たなものを追い求め続けたニューマン。そもそも、本格的に演技の道を歩み始めたのは、大学のフットボールチームの喧嘩に巻き込まれて退部扱いを受けたのがきっかけだったとか。
その後、契約していた映画会社の方針が気に食わず上層部に文句をぶつけるなど、いわゆる「物言う俳優」としても知られた彼。監督にも役作りの提案をズバズバ突きつけるなど、物議をかもす場面も多かったようだ。それもこれも、「いい映画にしたい!」という情熱あってのこと。とことん役にのめりこむことでも知られ、役作りが高じて40代半ばでプロのカーレーサーにまでなったことは有名だ。彼の人生を俯瞰すると、そこにはまさにこの映画のエディと同じ、常に変わり続ける精神を感じずにいられない。
この役が彼にとってもかなり思い入れが大きかったことは確実だ。そうでなければ、わざわざ25年越しの『ハスラー2』に同じ役で再登板することはなかったはず。ニューマンは続編のこの役で念願のアカデミー賞主演男優賞を受賞している。